今回は、簡単なオペアンプ回路と組み合わせたデュアルスイッチング電源で、出力電圧のシーケンスを同時に制御できる回路を紹介する。この回路では、オン時に3つの出力電圧を制御する。
ASICやFPGA、DSPは、何種類もの電源電圧を必要とする上に、電源オンの順番に制約がある。I/O回路は通常最も高電圧であるが、多くの場合は、最初にオンにし、続いて他の電源を高電圧から低電圧の順にオンにして、最後に主電源をオンにする必要がある。
この際、ある電源が別の電源よりもダイオード降下電圧以上に高くならないようにする必要がある。さもないと、I/O回路からの過剰な戻り電流が、ICを通って低電圧線側に流れ、高価なICを壊してしまう。この対策として一般的なのは、電源ライン間に電圧が低くなる順にダイオードを外付けし、高圧側を「低圧側電圧+ダイオード降下電圧」以内にクランプする方法である。これによって、ICのラッチアップを防ぐのである。
ダイオードは、電源オン時に低圧側が高圧側より高くなる瞬間だけ導通するが、高圧側が低圧側のどれよりも高くなったとしても、ダイオードは逆バイアスになって導通しない。もっと適切な方法は、電源コントローラーICにより、電源オン時の電圧シーケンスを精密に制御することである。図1は、簡単なオペアンプ回路と組み合わせたデュアルスイッチング電源で、出力電圧のシーケンスを同時に制御することができる。
この電源シーケンス回路では、オン時に3つの出力電圧を制御する。各電圧は、その次に高い電源ラインが一定値に達するまで、その電源ラインの電圧値に追随する。
3.3VのマスターI/O電源(図には示していない)がまず立ち上がるとしよう。3.3Vラインのコントローラーのソフトスタート機能で、電源電圧はスムーズで直線的に立ち上がる。TPS5120デュアルスイッチングレギュレーターは、2.5Vと1.8Vを生成する。通常のスイッチングレギュレーター回路では、R4およびR10の下側をグラウンドにして、出力電圧を固定値に設定することが多いが、この回路では、両抵抗の下端電圧を、オペアンプの出力が制御している。アンプの出力がゼロの場合は、あらかじめ決めた固定値に電源出力を設定するが、アンプ出力がゼロを超えると、電源出力を設定点よりも低くする。
2つのオペアンプは反転構成になっていて、その次に高い出力電圧をその入力、つまりセンス電圧とする。従って、電源オン時に、3.3V出力が0Vのときは、アンプIC1の出力電圧はハイになり、TPS5120コントローラーを駆動してその出力を0Vに抑える。2.5V出力も0Vであるため、アンプIC3の入力電圧を制御し、IC3の出力もハイになる。3.3V出力が直線的に上昇するに従って、アンプの出力電圧は直線的に下がって0Vになる。
この結果、2.5V出力は0Vからその最大設定点2.5Vまで上昇する。1.8V出力も同様に、2.5V出力に追随する。アンプ周りの抵抗値は、例えば3.3Vセンス電圧がトラッキング電圧レベル(ここでは2.5V)に達したときに、アンプの出力がちょうど0Vに達するように設定する。こうすれば、センス電圧が2.5Vより高くなっても、TPS5120の出力電圧がそれ以上高くならない。アンプの出力電圧は既にグラウンドレベルで飽和しているからだ。
このような同時トラッキングには、重要な設計条件がいくつかある。アンプのフィードバック比R5‐R6は、R1とR4で決まるフィードバック抵抗分割比に等しくなければならない。それに加えて、TPS5120コントローラーのレファレンス電圧(この例では0.85V)を、アンプの非反転入力に用いなければならない。
レファレンス電圧値がこの値と違うと、トラッキング電圧出力はセンス電圧と異なってしまう。さらに、オペアンプは、入力オフセット電圧が低く、出力電圧が少なくともコントローラーのレファレンス電圧の大きさになるものを選ぶ必要がある。
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