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複数の高速DACを用いたアンテナ・ダイバーシティーによる信号受信の改善ピコ秒レベルでの同期をとるには?(2/3 ページ)

» 2016年08月10日 11時30分 公開

アンテナ・ダイバーシティー

 無線システムにおけるアンテナ・ダイバーシティーの実装には、いくつかの方法があります。アンテナ・ダイバーシティーは、アンテナ間の空間を用いてシグナルを識別することから、空間分割多元接続(SDMA)の1手法といえます。送信側に複数のアンテナ、受信側に1つのアンテナを配したり(MISO)、送信側に1つのアンテナ、受信側に複数のアンテナを配したりすることも(SIMO)できます。送信アンテナと受信アンテナの両方を複数配置する(MIMO)ことも可能です。

 MIMOベースのシステムでは、アンテナ・ダイバーシティーという点では最良の結果が得られますが、デコードが複雑になるため、高度なトランスミッターとレシーバーが必要になります。絶えず変化する環境でチャンネル特性を一定にすることも求められます。トランスミッターとレシーバーの距離が長くなると、送信アンテナと受信アンテナ間のチャンネルの複雑性が不安定になり、識別が難しくなるため、MIMOの利点はそれほど大きいものではなくなります。無線通信では、複数の送信アンテナと1つの受信アンテナを配したシステムが広く用いられています。このシステムであれば、アンテナ・ダイバーシティーを利用してパフォーマンスを向上させることができます。

 アンテナ・ダイバーシティーを備えたMISO無線システムでは、複数のDACが複数のアンテナで同時にデータを伝送します。送信アンテナは、例えば、鉄塔などの物理的に異なる場所に配置されているため、信号は異なる経路でレシーバーに届きます。送信アンテナから受信アンテナへの経路はそれぞれ異なります。受信された信号は、各チャンネルにおける特定のマルチパス効果により、それぞれのアンテナで異なります。伝送されるパイロット・トーンが使用された各チャンネルの特性により、レシーバーは各チャンネルのパフォーマンスに関する重要な情報を受信することができます。この情報を利用すれば、伝送前にデータをデジタル的に修正して、レシーバーでの受信感度を最大限に高めることが可能です。それぞれのチャンネルで個別の修正および補正が求められるため、各送信アンテナで個別のDACおよび専用のデジタルシグナルプロセッサ(DSP)が必要となります。

 送信側のDACの時間的整合性が完全ではない場合、伝送信号が誤って調整されたり、ビームフォーミングの精度が低下したりします。トランスミッターは各ポイント間で安定したチャンネルを維持することができなくなり、レシーバーは、これによるエラーを訂正することができなくなります。時間領域でこの問題が生じるのを避けるためには、DACを同期させる必要があります。つまり、データを各DACから同じ時間に送信する必要があります。ごくわずかな時間差でも、システムのパフォーマンスを悪化させる可能性があります。

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