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複数の高速DACを用いたアンテナ・ダイバーシティーによる信号受信の改善ピコ秒レベルでの同期をとるには?(1/3 ページ)

複数のアンテナを利用してアンテナ・ダイバーシティーを実現する際に、各チャンネルのD-Aコンバーター(DAC)をピコ秒レベルで同期させる必要があります。そこで、高度な同期を図りやすくした高速DACが登場しています。ここでは、アンテナ・ダイバーシティーに必要な要件を整理しながら、そうした新しい高速DACの利点を見ていきましょう。

» 2016年08月10日 11時30分 公開

はじめに

 現代の無線システムでは、データ・スループットを最大化して伝送の信頼性を高めるために、非常に多くのダイバーシティー・テクニックが用いられています。時間、周波数、符号に関する多様なテクニックにより、信号を複数のユーザーに同時に伝送し、伝送されるデータ量を最大化しています。異なるタイミングや異なる周波数、あるいはゴールド・コードとして知られるさまざまなバイナリー・シーケンスを使用してデータを伝送することにより、互いを識別し、エラーなく受信できる信号が生成されます。こうしたテクニックは広く知られており、数十年にわたって利用されてきたため完璧なものになっています。

 また、これらのテクニックは、アンテナ・ダイバーシティー(空間ダイバーシティー)と組み合わせて使用できます。アンテナ・ダイバーシティーは、複数のアンテナを用いて信号を送受信する技術です。単純なアンテナ・ダイバーシティーでは、最高のパフォーマンスを発揮するアンテナを組み合わせて信号をデコードします。より複雑なアンテナ・ダイバーシティーには、MIMO(多入力多出力)システムとビームフォーミング・アプリケーションが含まれます。このケースでは、複数のアンテナをトランスミッターとレシーバーに配置して空間ダイバーシティーを高めます。

 複数の伝送アンテナを使用する場合、各チャンネルのデジタル・アナログ・コンバーター(DAC)の間でのタイミング差をピコ秒域にすることが重要となります。そのためには、各DACを同期させ、伝送データを同時にブロードキャストする必要があります。この条件を満たせば、複数のアンテナを通じて同じデータを共通のレシーバーに伝送し、信号が適切に受信される可能性を最大化するとともに、トランスミッターからの信号損失を最小限に抑えられます。

TDMA、FDMA、CDMA

 通信システムでは、ダイバーシティーのような手段を利用して、複数のユーザーに対応することができます。この最も基本的なバージョンが、時分割多元接続(TDMA)です。この方式は基本的に、データを異なるタイミングで複数のユーザーにデータを伝送するものです。その後、レシーバーが割り当てられたタイムスロットを待機し、適切なデータをデコードします。周波数分割多元接続(FDMA)もほぼ同じ仕組みですが、これは周波数領域で行われます。データは特定の周波数で複数のユーザーに伝送され、レシーバーはその周波数のデータのみをデコードします。より先進的なシステムでは、符号分割多元接続(CDMA)が無線システムに組み込まれています。この方式では、データに特定の符号を付けた後に伝送します。その後、レシーバーでこの符号を用いて、特定のユーザーに伝送されたデータをデコードします。これらのテクニックは異なる領域で実装されるため、同じシステム内に組み合わせて使用することで、ダイバーシティーを最大化することが可能です。

 これらのテクニックは数世代にわたる無線プロトコルで使用されており、世代を重ねるたびにシステムのデータ・スループットが向上してきました。こうしたテクニックは、距離の長短にかかわらずデータ伝送時には避けられない、フェージングと呼ばれる現象を解決するものです。

 フェージングは、信号が伝送されるチャンネルにおいて打ち消され、信号の振幅が減少する際に生じます。ブロードキャスト・アンテナから送られた信号は、必ず複数の異なる経路を通ってレシーバーに届きます。送信された信号の位相は、レシーバーに届くまでに経路上で変化します。レシーバーで信号が打ち消されてフェージングが発生するのは、この位相の変化が原因となっている可能性があります。このフェージングの影響を打ち消すには、複数の送信アンテナまたは受信アンテナを使用する方法が考えられます。複数のアンテナで信号が送信または受信される場合に、全てのケースで信号が打ち消されることはほぼあり得ません。複数のアンテナを使用する手法はアンテナ・ダイバーシティーと呼ばれ、無線システムでデータ・スループットをさらに向上させる効果があります。

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