電源を投入すると、瞬間的に大きな電流が流れます。これを突入電流または起動電流、始動電流、英語でインラッシュカレント(Inrush current)と呼びます。
図1でも示しましたが、突入電流はデカップリングコンデンサーなどの外付けコンデンサーに影響されます。
マイコン自体に起因する突入電流も存在しますが、さほど大きくありません。何よりマイコン自体の突入電流は、ユーザー側で制御することはできません。従って、突入電流を抑えるには、デカップリングコンデンサーなどの外付コンデンサーを調整する方法が有効です。
マイコン自体の突入電流はマイコンによって異なります。データシートなどに記載されている場合もあります、記載のない場合はメーカーに問い合わせて確認しましょう。
デカップリングコンデンサーの目的は、電源のノイズを取り除き、電位を安定させることです。コンデンサーの種類によっては、容量は大きいのにノイズ除去効果の低いものがあります。一般的には、セラミックコンデンサーやタンタル電解コンデンサーが小型で周波数特性に優れ、かつインピーダンスも低いのでマイコンのデカップリングコンデンサーに有効だとされています。基本的なことですが、ノイズの種類をよく見極めて、ノイズ除去効率の高い、容量の小さいコンデンサーを選びましょう。
参考記事:Q&Aで学ぶマイコン講座(3):マイコンに接続する推奨デカップリングコンデンサー接続方法を教えて!
突入電流が引き起こす問題は、短時間ながら大電流が流れることにより、電源電圧が低下し、そのためにパワーオンリセット回路が作動し、マイコンが起動できなくなることです。そのため、総電流量は同じでも、ピーク電流を少なくすることによって、突入電流による誤作動をなくすことができます。
最も簡単な対策としては、コイル(インダクタンス)を電源ラインに挿入することです。突入電流が流れる期間は長くなりますが、ピーク電流を低く抑えることができます(図2参照)。
常時接続されているデカップリングを最小にして、マイコンの起動後に、GPIO(汎用I/O)を使ってデカップリングコンデンサーを時間差で接続する方法もあります。ただし、この場合は、電源がGPIOのPMOS経由でつながりますので、ノイズ除去効果はあまり期待できません。この対策の効果は、“しないよりはマシ“という程度です。図3に電源ノイズの実測結果を示します。
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