ホームネットワーク向け無線規格として注目を集める「Thread」を解説する本連載。最終回となる今回は、バッテリー駆動デバイスの基本動作とパフォーマンスの比較を紹介する。
あらゆるデバイスやセンサーがつながる「IoT(モノのインターネット)」時代を迎え、ホームネットワーク向けに注目を集める無線規格「Thread」。本連載は、Thread Groupが発行するホワイトペーパーから、Threadの詳細を解説している。
<Thread Groupが公開するホワイトペーパー>
1. Thread Overview
2. 6LoWPAN
3. Security & Commissioning
4. Boarder Routers
5. Battery Operated Devices
前回は、Threadネットワーク内のノードと外部ネットワークにある他のデバイスとの接続を行う役割を持つ「ボーダールーター」のオペレーションと任務実行の例を紹介した。最終回となる今回は、バッテリー駆動デバイスについて解説していく。
Thread Groupの目標は、家中のデバイス間の無線通信を、高信頼で価格競争力があり、かつ低消費で実現するオープンな技術標準を策定することである。これら目標の中で、低消費電力についてはバッテリー駆動のデバイスで達成される。Threadネットワークは、常に電源供給を受ける親機のルーターと、メッセージの経路確保やスリープ時の保持を行ってもらうバッテリー駆動デバイスで構成されている。今回は、これらバッテリー駆動デバイスの基本動作とパフォーマンスの比較を紹介する。
バッテリー駆動デバイスの動作は、スリープから復帰時に親機へPollしてメッセージを確認に行くか、復帰時にデータを送るかとなる。これらの動作効率がエネルギー消費に影響し、そのデバイスのバッテリー寿命への重要項目ともなる。デバイスの適切なバッテリー寿命を保つために、これらの基本動作を最適化することが必要である。
バッテリー駆動デバイスは、2つの基本動作を行う。データ送信のためにスリープから復帰するか、自分宛のデータを受信するためにスリープから復帰する。スリープ中のデバイスに直接データを送ることはできないので、そのデバイスの親機がデータを保持し、スリープ中のデバイスからのデータ要求を待つ。
送信の場合はシンプルで、スリープから復帰後、適切なデータでパケットを構成し、親機へ送る。親機はThreadネットワークを通じて、目的デバイスまで転送を行う義務を負う。単純な具体例として、窓センサーが動作した割り込み信号によりプロセッサが復帰し、窓が開いたことをメッセージで通知するケースがある。
受信の場合はIEEE 8015.4-2006にて、バッテリー駆動のデバイスが親機にデータを要求することができると定められている。親機はAckフレームにて、フレームペンディングビットをデータがある場合は「1」を、無い場合は「0」を設定して応答する。
このやりとりの簡単な具体例として、ユーザーがスリープ中のドアセンサーの構成パラメータを変更する場合がある。より頻繁に復帰し、状態と電池残量のレポートを送るように変更する場合などである。この場合、メッセージはスリープ中のデバイスの親機に送られ、エンドデバイスが復帰し、メッセージのPollを行うまで保持される。
図2は一般的なスリープと復帰のサイクルを示す。
無線機とマイコンが、以下のステップを繰り返す。
実際には、このスリープと復帰のサイクルにて、消費電力に影響をもたらす幾つかの要素がある。それらのうち重要となる項目は、
いくつかの項目は実装するエンジニアにより最適化できるが、無線機とマイコンの機能/能力がタイミングと消費電力に影響する。無線送信の時間とAckを待つ時間は、パケットのサイズとIEEEE 802.15.4仕様で決められているので実装による違いは生じない。
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