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平面型トランスとDC-DCコンバーターのパッケージDC-DCコンバーター活用講座(11) 電力安定化(11)(1/2 ページ)

今回の記事では、平面型トランスをベースとしたDC-DCコンバーターの概要とパッケージスタイルについて解説します。

» 2017年12月18日 11時00分 公開

平面型トランスをベースとしたコンバーターについて

 従来、トランスやインダクターは巻き付け型の部品でしたが、1980年代以降は平面型磁気設計が使われるようになってきました。ただ、これまでに使われてきた製造工程は非常にコストのかかるものだったので、平面型トランスは、特殊なアプリケーションを除いてほとんど市場に浸透していません。しかし、多層回路基板のコスト効果が向上してより広く使われるようになり、工程技術も改善されるに及んで、この技術が再び注目されるようになってきました。

 平面型インダクターは、PCBの銅製多層構造をトランスまたはインダクターの巻線として使用します。この場合は、必要な巻数を実現するために、埋設ビアを使用して異なる層同士を接続します。

 使用できる層の数には実用的な制限とコスト的な制限があるので、平面型磁気設計では、必要な巻数や層数を少なくするために、高周波のPWM変調器や駆動回路を使用します。より高い周波数を使用することによって生じる主な問題は、表皮効果です。周波数を上げていくと、電荷キャリアが導体の表面により近い位置で移動するようになって有効断面積が減少し、I2R損失が増加します。この表面効果は、導体を平面型(矩形断面)設計とすることで相殺できます。

 この技術の主な利点は、大量の電力を送ることができるにもかかわらずトランス構造を極めて薄くできることです。これは、DC-DCコンバーターの高さを非常に低くできることを意味しています。平面型設計のその他の利点としては、巻線の放熱性が良好、巻線構造の再現性が高く機械的に安定している、高密度設計、洩れインダクタンスが少ない、高電力密度などがあります。これらの利点によって、平面型トランスは、大電力DC-DCコンバーター技術に欠かすことのできない部品となっています。また、多層PCB構造の進歩によって、巻線間のエポキシ絶縁が1次側回路と2次側回路間の高い絶縁電圧に耐えられるようになり、2250Vdcの基本的な絶縁要求を満たすことができるようになりました。

 ユーザーにとってこの技術が欠点となることがないのは明らかですが、製造者からすると、その設計と製造はシンプルとはとても言えないものになっています。多層構造では、結合容量が大きくなってPWM制御が複雑になります。平面型トランスとこれに関連する従来型回路の結合は、終端損失を防ぐために慎重に検討する必要があります。また、コアのギャップと積層された巻線が近接しているので、大きな渦電流損失を生じる可能性があるほか、巻線比が異なるので、入力と出力の組み合わせごとに個別のPCBを設計してテストする必要があります。

図1:平面型トランスをベースとしたコンバーターの構造 出典:RECOM(クリックで拡大)

 平面型トランスの巻線は、多層ボードのPCB配線です。通常、1次側および2次側の巻線は、洩れインダクタンスを減らすために交互に積層されます。PCB配線使用に伴う困難の1つは、コアに最も近い巻線終端への電気的接続です。これに対する一般的なソリューションは、下の図2に示す埋設ビアを使用することです。この図は、3回巻の上層トレースと同じく3回巻の下層トレースをビアで接続することによって構成された、6回巻の巻線を示しています。よって、都合のよいことに、巻線の両端はコアの外側に置くことができます。

図2:交互配置された平面型多層トラック 出典:RECOM(クリックで拡大)
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