今回は、DC-DCコンバーターの突入電流と負荷の制限について解説します。
配電システムでは、突然の負荷増大は著しい電圧降下を発生させる可能性があります。これら短時間の電圧低下については、その後に続く電源の部品に影響を与えないようにすることが理想です。DC-DCコンバーターを入力電圧低下や停電から保護するための一般的な方法は、コンデンサー内に十分なエネルギーを保存して、電圧低下や停電の期間中もコンバーターが動作を継続できるようにすることです。図1に簡単な回路を示します。
回路は、カップリングダイオードDと、1つまたは複数のコンデンサーCで構成されます。コンデンサーCは、通常動作中に動作電圧VIN−VDiodeに充電されます。入力電圧の低下や停電が発生すると、ダイオードが逆電流をブロックしてコンデンサーの電荷が電源方向に放電されるのを防ぐので、DC-DCコンバーターはコンデンサーCに保存された全てのエネルギーを使用できます。コンデンサーの電荷はDC-DCコンバーターに向かって放電されるので、この時点でコンデンサーの電圧は低下し始めますが、その計算は複雑です。これは、DC-DCコンバーターが定電力デバイスであり、その入力電流は入力電圧に反比例することによります。
コンデンサーに保存されるエネルギーECは、容量Cに電圧VCの二乗を乗じた値に等しくなります。ここでVCは、入力電圧VINからダイオードDによる電圧降下を減じた値です。
t0=0において入力電圧に停電が生じた場合、コンデンサーの電圧は、コンデンサー放電の式に従って指数的に低下し始めます。
充電されたコンデンサーは時間t1まで放電できます。時間t1は、コンデンサー電圧VCが、DC-DCコンバーターの最小入力電圧VIN, MINに等しくなる時間です。従って、コンデンサーの残留エネルギーは次式のようになります。
t0−t1の間に入力電圧をバックアップするために必要なエネルギーは、次式で表されます。
このエネルギーは、バックアップ時間tBACKの間に必要な入力電力を供給しなければなりません。必要入力電力は出力と効率から計算でき、その値は次のようになります。
この式を変形すれば、必要なバックアップ容量が得られます。
これらの式は、バックアップコンデンサーが大きければそれだけバックアップ時間が長くなることを示していますが、大容量コンデンサーは多くのボード面積を必要とするので、多くの場合、Cのサイズに関しては物理的な制約があります。しかしこの式は、保存されるエネルギーはVC2に比例するので、DC-DCコンバーターの入力電圧範囲は広いほど良いことも示しています。最大限のバックアップ時間を実現するには、公称VINがコンバーターの最大入力電圧に近いDC-DCコンバーターを選ぶ必要があります。さらに、高効率のものを選んだり負荷のディレーティングを行なったりすることも有効です。
図1に示す簡単な回路には2つの欠点があります。ダイオードDにおける電圧降下は通常動作時の効率を低下させる追加的な損失となり、大容量のバックアップコンデンサーは、充電のために大きな突入電流が流れ、1次電源に問題を引き起こす可能性があります。これらの問題はともに、後述の図4に示す切断コントローラーのバリエーションによって、過電圧ではなく低電圧発生時に電源を切断したり、ソフトスタート機能によって突入電流を減らしたりすることによって解決できます。
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