本連載では、「記録計/データロガー」に関する基礎的な知識を解説する。第1回の今回は、記録計/データロガーの歴史を振り返るとともに、良い記録計/データロガーとはどのようなものか、考察していく。
本記事は、計測器専門の情報サイト「TechEyesOnline」から転載しています。
温度など緩やかに変化する現象を長期間にわたって記録を行う装置が「記録計/データロガー」である。記録計の歴史は長く、初期の製品は精密機械である指示計器の技術の延長にある電磁オシログラフや直動式記録計であった。
エレクトロニクスの進化によって、電子回路を用いた記録計が出現して高精度な記録が可能になり、その後ディジタル化が進み現在の記録計/データロガーへと進化してきた。今後は大量に取り込んだ測定データをITによって解析を行い、利用者にとって使いやすいデータを得る仕組みに発展すると期待されている。
本連載では、「記録計/データロガー」に関する基礎的な知識を解説する。なお、本連載の執筆にあたり、記録計/データロガーを創業当初から開発してきた横河電機の協力を得ている。現象の変化を記録する波形測定器には極めて緩やかな変化からギガヘルツ帯域の超高速現象を観測するものまでが存在する。本連載では図1にある記録計/データロガーに絞り、3回にわたり解説を行う。
記録計は長年にわたって温度などの現象の変化を紙にペンで記録していく仕組みがとられてきた。現在でも記録を紙に書く要求は根強くあるため、ペンレコーダーや打点式記録計はまだ多く使われている。
しかし、紙に記録を残すのは測定結果を見るだけであれば使いやすいが、測定データの検索、高度な解析、制御に利用できず、記録データとして保存できない欠点がある。そのため紙だけではなく電子データも記録する装置が増えてきている。
ここでは紙に記録する記録計から開発の歴史を解説していく。
直動式記録計は今では美術館や博物館でよく見る温湿度記録計(図2)くらいになってしまったが、過去には実験用や工業用の記録計として活躍していた。
実験用や工業用に作られた電気信号を記録する製品は指示計器(メーター)と同じ原理で、可動コイルにペン機構を組み込んだものとなっていた。初期の紙送り機構はモーターではなく、手巻きのぜんまい式テンプ時計を使ったものであった。その後モーターによる紙送り機構の製品も加わった。ぜんまいで動く直動式記録計は電源のない場所でも使える長所を持っているが、記録精度が高くないという短所はある。
現在では電池で長時間駆動できる小型で安価なデータロガーが販売されているため、直動式記録計の需要は限られたものになった。
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