ここでは観測した波形データの記録や伝送について解説する。
メモリレコーダーに取り込んだ波形データは、画面で見るだけではなく、記録として保存する必要がある。大容量メモリが安価に入手できるようになる以前は、感光紙や感熱紙などへの記録が多かったが、最近では紙へ記録する需要は減り、PCでの解析がしやすいSDカード、CF(CompactFlash)カード、USBメモリへの記録が多くなってきた。
最近は長時間の記録をするために、ハードディスク(HDD)やSSD(Solid State Drive)に直接波形データをリアルタイムに保存できる製品もある。
メモリレコーダーは、PCへ観測結果を転送したり、メモリレコーダーを制御したりするための通信インタフェースを持っている。高速通信が可能なUSBやイーサネットは多くの製品で対応している。過去に一般的であったGP-IBは、オプションで対応しているメーカーがある。
コンパクトな電池駆動型メモリレコーダーには、通信経由で設定できないものや、通信インタフェースの種類が選べない製品があるので、機種選定には注意が必要である。
メモリレコーダーに取り込んだ波形データをPCで加工して表示すると、便利なことがある。PCソフトは、メモリレコーダーを製造するメーカーから自社製品向けに提供されるものや、他の企業から提供されるものがある。例えば、小野測器から販売されている音響や振動解析に向いたPCソフトウェア「Oscope」は、日本国内で使われている多くのメモリレコーダーに対応している。
メモリレコーダーに接続して使う周辺機器は、製造するメーカーが取りそろえて、本体とともに利用者に提供している。ここでは代表的なものを紹介する。
波形観測した対象物と接続するためのケーブルは、端子形状に合わせてさまざまな先端形状のクリップが必要となる。波形観測している間にクリップが容易に外れないものを選ぶ必要がある。
ケーブルやクリップには、使用できる最大電圧が規定されているので、選定する場合は仕様の確認が必要である。
メモリレコーダーは、パワーエレクトロニクス機器の波形観測に使われることが多いため、電流センサーの接続が必要な場合がある。電流センサーは直流から交流まで使えるものと、カレントトランス(CT)のように交流のみにしか使えないものがある。観測したい電流波形の最大電流値、必要な周波数帯域、測定対象のケーブル径などを考慮して電流センサーの選択を行う必要がある。
メモリレコーダーでも、オシロスコープのような10:1や100:1の減衰機能付きの広帯域絶縁プローブが必要な場合がある。
最近では非接触電圧プローブが販売されるようになったので、被覆したケーブルの上から交流電圧波形が観測できるようになった。防水加工などがされていて、容易に電圧を測定できない部分の波形観測に便利である。
高電圧で動作する機器の電圧波形を観測する際、入力モジュールの耐電圧が不足するため、直接接続することができない場合がある。そのような時には高電圧差動プローブを利用する。
日本国内にはメモリレコーダーを使う利用者が多くいるため、国内では主に計測器メーカー4社から、メモリレコーダーが販売されている。それぞれの製品は特長を持っているので、最適な機種を選ぶことができる。
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