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設計事例で学ぶデルタ-シグマADCでのアンプノイズ影響アナログ設計のきほん【ADCとノイズ】(7)(1/4 ページ)

高分解能ADCに高ゲインの外部アンプを組み合わせるときは、アンプのノイズ特性を慎重に検討する必要があります。今回は、アンプが異なると同じ高分解能ADCのノイズにどう影響するのか、設計例を用いて分析します。

» 2019年09月26日 11時00分 公開
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 前回(連載第6回)では、出力換算ノイズと入力換算ノイズを定義し、それぞれに対する計算式を導き、単一段および、複数段のアンプ構成を詳しく掘り下げ、ゲインの増加が低分解能および高分解能のA-Dコンバーター(以下、ADC)に与える影響について検討しました。高分解能ADCに高ゲインの外部アンプを組み合わせるときは、アンプのノイズ特性を慎重に検討する必要があることも分かりました。

 この説を実証するために、今回は、アンプが異なると同じ高分解能ADCのノイズにどう影響するのか、設計例を用いて分析します。ベースラインのADCとして、32ビットADC「ADS1262(Texas Instruments製)を使用します。このADCを選択したのは、ノイズレベルが低く、プログラマブル・ゲイン・アンプ(PGA)が内蔵されているためです。内蔵PGAのノイズは解析する上での基準点となり、さまざまな外部アンプとの比較が可能になります。

ADCの入力換算ノイズの算出

 最初に必要なのは、ベースラインADCの入力換算ノイズを確定することです。理論的には前回に導いた計算式を使用することや、図1に示す等価回路ノイズモデルを使用することもできます。

図1:「ノイズなし」部品および1つの入力換算総ノイズ源

 しかし、この方法では、ADCとPGAの両方のノイズスペクトル密度が分かっていなければなりませんが、ADCのデータシートにこの仕様が記載されていることはあまりありません。その代わり、計算で求めるのは諦めて、ADCのデータシートのノイズ表から適用できる入力換算ノイズを単に探してくることができます。これにより、アンプが内蔵されたADCを使用するメリットが際立ちます。前回紹介した計算がADCのメーカーによって実質的に完了しているので、ADCと一緒に外部アンプを使用するのに比べてシステムノイズ解析が単純になります。

 そのため、唯一残る作業はADCの設定の選択です。この例では、ADS1262を60サンプル/秒(SPS)の出力データレート(ODR)でSINC4フィルターとともに使用します。ただ、この方法はデータレートとフィルターの種類のどの組み合わせにも当てはまります。表1に、利用可能なすべてのゲインに対応する、この設定のADS1262の入力換算ノイズ値を示します。今後この解析のベースライン入力換算ノイズとして、これらの値を使用します。

表1:「ADS1262」の入力換算ノイズ
データレート フィルターモード ゲイン
1 2 4 6 16 32
60SPS SINC4 0.383
(2.288)
0.195
(1.174)
0.105
(0.623)
0.059
(0.347)
0.040
(0.242)
0.031
(0.188)
(μVRMS[μVPP])−ODR=60SPS、SINC4フィルター、TA=25℃、AVDD=5V、AVSS=0V、VREF=2.5V

外部アンプの選択

 これでADCの入力換算ノイズを求める方法が分かりました。次のステップは、ベースライン性能と比較する外部アンプを選択することです。外部アンプが決まると、単一アンプのノイズモデルを一部変形したものと、前回に得られた入力換算ノイズの計算式を使って、解析を行うことができます。実際には複数段のアンプ構成回路を評価するのですが、ADS1262の内蔵PGAのアンプノイズは表1で示した入力換算総ノイズに含まれるため、前回の複数段アンプ構成モデルを使用する必要はありません。図2に、等価回路ノイズモデルの変形版を示します。式1は、これに対応する入力換算ノイズ計算式です。

図2:ADC『ADS1262』とPGAノイズを組み合わせた等価回路ノイズ・モデルの変形版
式1

 この解析では、「OPA141」「OPA211」「OPA378」を選択しました。この3つの高精度アンプは電圧ノイズ特性が異なるため、それぞれの利点と課題がはっきりしますが、どのタイプの外部アンプでもこれと同じ解析を行うことが可能です。

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