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負の出力電圧を動的に調整する「ミッシングリンク」電源設計のヒント(1/3 ページ)

負の出力電圧を生成する標準的な手法はいくつかあり、一方で出力電圧を動的に調整するよく知られた手法もあります。この技術記事では、シンプルなレベルシフト回路を使ってこの2つの手法をつなぎ合わせる「ミッシングリンク」について紹介します。

» 2020年04月23日 11時00分 公開

 負の出力電圧を生成する標準的な手法はいくつかあり、一方で出力電圧を動的に調整するよく知られた手法もあります。この技術記事では、シンプルなレベルシフト回路を使ってこの2つの手法をつなぎ合わせる「ミッシングリンク」について紹介します。

降圧コンバーターを反転昇降圧コンバーターとして使用

 負電圧を出力する電源が必要なアプリケーションとしては、試験および測定、航空宇宙防衛、車載機器、医療機器などがあります。負電圧レールを生成する一般的な方法の1つが、普通の降圧コンバーターを反転昇降圧コンバーターとして動かすことです(参考資料[1]、[2]、[3])。具体的には、降圧コンバーターICのグランドピンを負出力電圧ノード(-VOUT)に接続し、インダクター出力をシステムグランド(0V)に接続。出力とフィードバック(FB)ピンの間の分圧抵抗で、出力電圧を設定します。図1は、構成例です。

図1:降圧コンバーターを反転昇降圧コンバーターとして使用し、負出力電圧を生成 出典:Texas Instruments

 降圧コンバーターICを使用して負電圧を生成する場合の主な課題は、ICのインタフェース接続と信号のレベルシフトをどう行うかということです。入出力(IO)ピンは、システムグランド(0V)ではなく負出力電圧(-VOUT)を基準とします。Texas Instrumentsのアプリケーションレポート、「反転昇降圧コンバーターの操作」(英語)では、システムグランド(0V)ドメインとローカルICグランド(-VOUT)ドメインの間でイネーブル(EN)、パワーグッド(PGOOD)、同期(SYNC)の各信号をレベルシフトするいくつかの回路について詳しく説明しています。このレポートには、ボード線図と負荷過渡応答の測定による回路の試験方法についても実用的な提案が載っています。このほか、アプリケーションノート「反転昇降圧コンバーターのレベルシフト制御」(英語)にも、レベルシフト回路の例が含まれています。

動的電圧調整について

 次に、動的電圧調整について考察しましょう。普通の降圧または昇圧コンバーターについて、参考資料[4]、[5]、[6]に、出力電圧を調整する方法がいくつか載っています。一般的には、図2のように、FBピンと可変電圧ソース(VADJ)の間に接続された抵抗を用いる方法がよく使われます。

図2:FBノードへのソース/シンク電流でコンバーターの出力電圧を動的に調整可能 出典:Texas Instruments

 この方法では、VADJの電圧を上下させることで、コンバーターの出力電圧を動的に調整します。具体的には、VADJが(レファレンス電圧VREFと等しい)FBノードの電圧より高いと、電流が抵抗RADJを通ってFBノードに流れることで、出力電圧が下がります。逆に、VADJの電圧がFBノードの電圧より低い場合は、電流が抵抗RADJを通って逆方向に流れるので、出力電圧が上がります。

 これについての1つの解釈は、FBノードへのソースまたはシンク電流により、トップまたはボトム抵抗の値が減少したように見えることです。抵抗RADJは、トップまたはボトムの抵抗と並列に置かれた仮想的な抵抗のように振る舞います。

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