半導体製造装置の高圧電源の修理を依頼された。不具合内容は『電源投入後にブレーカーから火花が出て電源が落ちる』ということだった。半導体製造装置では、かなり危ない不具合だ。今回はこの危ない高圧電源の修理の様子を紹介する。
半導体製造装置の高圧電源の修理を依頼された。不具合内容は『電源投入後にブレーカーから火花が出て電源が落ちる』ということだった。半導体製造装置では、かなり危ない不具合だ。高圧電源のケースを開けて内部を確認した。図1にブレーカーの写真を示す。
ブレーカーはAC200V三相電源用で作動電流は40Aだった。三相電源を接続し動作を確認した。ブレーカーをオンするとファンが回り始め、約5秒後にパワーリレーがオンして火花が生じた。同時にブレーカーからも火花が出て電源が落ちた。直後にブレーカーを入れると高圧電源は起動した。この現象から、電解コンデンサーの突入電流防止回路が機能していないことが分かった。ブレーカーに接続されたトランスと整流モジュールを図2、図3に示す。
図2の下に三相電源の整流モジュールがあり、整流した電源は上のパワーリレーを通して電解コンデンサーに接続されていた。
図3の右上にトランスがあり、これで制御電源を生成していた。また、図3の黄緑色の部分に25Ω25Wのホーロー抵抗が実装されていた。黄緑色にある抵抗が突入電流の防止抵抗だった。かなり大きな抵抗だったが実装したまま抵抗を測定すると1Ωだった。
この抵抗値は小さすぎるし、何かがおかしい。
この抵抗を外してマルチテスターで測定した。抵抗の測定結果を図4に示す。
図4のように電流制限抵抗が断線していることが分かった。『あれ、テスターで測定した1Ωの抵抗は何だったのか?』と思って、パワーリレーを見たら接点が溶着していた。指で押したら接続が離れてオープンになった。
これでブレーカーから出た火花の原因が分った。突入電流抵抗が断線していたので、電解コンデンサーは充電されなくなった。そして、制御電源のタイムアップでパワーリレーがオンして、接点で整流された電圧が電解コンデンサーに直接接続され、かなり大きな突入電流が発生。その結果、火花が出た。普通の突入電流防止リレーは充電電圧を監視して、十分な充電電圧になった時にリレーを作動させて抵抗を短絡し、大きな電力を電源から取り込む。しかしこの高圧機器では制御電源で5秒程度のタイマーを働かせて、電解コンデンサーの充電電圧を確認せずタイマーだけでパワーリレーをオンさせていた。充電電圧の監視回路の動作不良か、突入電流防止回路の設計ミスかが考えられる。
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