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LE Audio対応補聴器の活用例と要件LE Audio概説―補聴器の活用例【前編】(1/4 ページ)

本稿では、LE Audioの補聴器対応の活用例や同技術がそのための要件をどのように満たし、消費者向けアプリケーションへと発展していったのか説明します。

» 2022年08月01日 10時00分 公開
[Bluetooth SIGEDN Japan]

 データ転送や位置情報サービスなど活躍の場を広げてきたBluetooth技術ですが、イノベーションの始まりはオーディオストリーミングであり、同分野はBluetooth市場において最大のソリューション分野となっています。『Bluetooth 市場動向 2022年版』によると、Bluetoothオーディオストリーミング機器の年間出荷台数は2022年に14億台を超え、2026年には18億台に到達すると見込まれています。

 Bluetoothは20年以上にわたってオーディオストリーミング分野を支えてきましたが、同分野にさらなるイノベーションをもたらすのが、LE Audioです。仕様策定プロジェクトが完成間近であるLE Audioは、より低電力で高音質なオーディオを提供し、オーディオ周辺機器市場全体の成長を促進します。最新のBluetooth市場動向レポートによると、2026年までにBluetoothヒアラブルデバイスの年間出荷台数は約2.6倍もの成長が見込まれています。

 LE Audioの低消費電力性能は新しいタイプのオーディオ周辺機器を可能にし、補聴器にも対応します。より優れたフォームファクタを実現するため、より小型で装着しやすい補聴器が登場するでしょう。

 本稿では、LE Audioの補聴器対応の活用例や同技術がそのための要件をどのように満たし、消費者向けアプリケーションへと発展していったのか説明します。

補聴器の活用例

 LE Audioの開発初期の数年に、LE Audioの進化を推し進める活用例と要件について4つの大きな壁が立ちはだかりました。最初は補聴器業界のいくつかの活用例から始まりましたが、この時点での焦点はトポロジー、電力消費、レイテンシにありました。

 補聴器のトポロジーは、Bluetooth Classic Audioのプロファイルで実現できたことから大きな前進を遂げています。まずはここから始めましょう。

基本的な通話機能

 図1は、補聴器とスマートフォンを接続することで実現する、通話機能の2つの活用例を示しています。補聴器を装着したままで電話機を耳に当てると干渉が生じることが多いため、これはとても重要な要件となります。

図1:補聴器の基本的なトポロジー[クリックで拡大]

 左側の最も単純なトポロジーでは、スマートフォンから補聴器へのオーディオストリームがあり、逆方向のリターンストリームも可能です。主に通話で使用します。補聴器の装着者の声は補聴器のマイクで拾うような構成が考えられるほか、スマートフォンで直接音を拾うこともでき、ハンズフリー用のHFP(Hands-Free Profile)と基本的に同じです。ただし補聴器の要件では、2方向のオーディオストリームが互いに独立し、アプリケーションによって構成設定できなければならないというコンセプトが最初からありました。つまり、スマートフォンから補聴器へのストリームと、補聴器からスマートフォンへのリターンストリームは、別々に構成設定、制御され、個別にオン/オフの切り替えができなければなりません。

 図1の右側のトポロジーは、A2DP(Advanced Audio Distribution)やHFPで実現できることをはるかに超えています。ここでは、左右の補聴器に対して電話機が別々のオーディオストリームを送信しています。さらに、リターンストリームもそれぞれの補聴器のマイクから別々に送信できる、という複雑な構成になっています。これには、独立した2個のオーディオデバイスに対して別々の同期ストリームがあるという、Bluetooth Classic Audioのプロファイルで扱える内容を超えた第2のステップが必要になります。

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