メディア

LE Audio対応補聴器の活用例と要件LE Audio概説―補聴器の活用例【前編】(3/4 ページ)

» 2022年08月01日 10時00分 公開
[Bluetooth SIGEDN Japan]

リスナーをさらに追加した広域対応

 教室や介護施設などで多くの人たちが聴けるように、トポロジーはスケーラブルであることも求められます。この要件を発展させていくと、テレコイルを使用した磁気誘導ループシステムに代わるブロードキャスト機能にたどりつきます。これには、図4のように受信範囲内の不特定多数の補聴器が受信できるような、モノラルまたはステレオのオーディオストリームをブロードキャスト送信する、Bluetooth対応のブロードキャスト送信機が必要になります。

図4:テレコイルのインフラに代わるブロードキャストのトポロジー[クリックで拡大]

 図4では、片方の耳だけが難聴の人もいれば、両方の耳が難聴の人もいる(難聴の程度が異なる場合も多い)ことも認識されています。つまり、ステレオ信号とモノラル信号とが同時にブロードキャストできる必要があります。また、難聴の程度の違いに対応するために左右で異なるメーカーの補聴器を装着したり、片方に補聴器、もう片方に一般的なイヤフォンを装着したりする場合があることも示されています。

左右の補聴器のグループ化

 どのような組み合わせであっても、左右の補聴器を一組のデバイスとして扱い、両方が同じ音源に接続し、音量などの共通機能が一貫性を持って働くようにできる必要があります。こうして、異なるメーカー製かもしれない個々のデバイスが同時に制御コマンドを受け取ってコマンドを同様に解釈するという、Coordination(グループ化)のコンセプトが生まれました。

ブロードキャスト検出と暗号化の支援

 テレコイルの場合、信号を得る方法は1つだけです。テレコイル機能をオンにして、周囲の磁気誘導ループシステムから音声を受信できるようにするしかありません。それ以外のときは機能をオフにします。1つのエリア内のテレコイル信号は1つだけであるため、信号を選ぶ必要はありません。その一方、複数の言語を同時にブロードキャストするということはできません。

 Bluetoothでは、同じエリア内で複数のブロードキャスト送信機が稼働できます。これには明らかなメリットもありますが、適切なオーディオストリームの選択と、プライベートな会話の盗み聞き防止という2つの問題も新しく生じます。

 適切なストリームを選択するには、ユーザーがすぐに希望するストリームを見つけられるように、ストリームに関する情報が得られる必要があります。実際の使い勝手は、ブロードキャストストリームの検出が補聴器、電話、リモコンなどでどのように実装されるかにもよりますが、仕様では全ての可能性を網羅しなければなりません。音声情報案内を補う公共のブロードキャストでは相手を限定する必要はありませんが、限定が必要なケースも考えられます。例えば自宅では、隣の家のテレビ音声は拾いたくないものです。このため、オーディオストリームが暗号化できることが重要になります。認められたユーザーだけに暗号化キーを配布できなければなりません。このプロセスはセキュリティを保証しながらも、簡単にできる必要があります。

 現在の補聴器と同じような使い勝手を実現するには、低レイテンシのほかにも制約があります。2個の補聴器を装着する場合、それらが同じモノラルのオーディオストリームを受信するか、ステレオのオーディオストリームを受信するかにかかわらず、音像を安定させるためには左右のオーディオのレンダリングが25ミリ秒以内である必要があります。ステレオイヤフォンでも同じ課題がありますが、左右の機器が別々のメーカー製である場合には難しくなります。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

RSSフィード

公式SNS

EDN 海外ネットワーク

All material on this site Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
This site contains articles under license from AspenCore LLC.