メディア

マイコンの仕様を超える条件で使ったら、何が起きる?【前編】ハイレベルマイコン講座(1/3 ページ)

本記事では、マイコンにストレスを与え続けて動作させた場合、どのような不良現象が現れるかを2回にわたり詳しく解説する。第1回となる今回は、最初に「マイコンにストレスを与える環境」について、次に「高温、高湿、高電圧状態で発生する不良現象とメカニズム」として「故障モード」「不良現象のメカニズム」について説明する。

» 2022年08月12日 10時00分 公開

 マイコンを、仕様を超えた条件で使い続けると当然破壊する。では、破壊しない程度、すなわち、仕様を少し超えるストレスを与え続けて動作させた場合、またはその状態で放置した場合、どんな不良現象が現れるのか?

 例えば、ユーザーがマイコンを搭載した自社製品の寿命加速試験を行う際、その試験環境がマイコンの仕様を超えている場合は、マイコンに対しても寿命加速試験を行うことになる。この時の試験条件が、マイコンが破壊しない程度に仕様を超えていると、マイコンの動作に不具合が生じる場合がある。もちろん、ユーザーはマイコンの仕様を超えた保証範囲外であることを重々承知しているが、寿命試験の結果を分析する際に、どのような不良現象が起きているのかを知りたい時がある。

 そこで、マイコンメーカーが発行している信頼性マニュアルや、信頼度試験のドキュメントなどを参照するが、各不良現象については簡単な説明にとどまり、深く説明しているドキュメントは少ない。

 マイコンメーカーに問い合わせても、そもそもマイコンの仕様を超えた条件で使用した場合は保証範囲外で、かつ社外秘の情報が含まれる場合が有るため、詳しい説明が得られることは少ない。

 本記事では、マイコンにストレスを与え続けて動作させた場合、どのような不良現象が現れるかを2回にわたり詳しく解説する。ただし、マイコンの信頼性に関しては社外秘の情報が含まれる場合が多いため、あくまで一般論として解説する。

 第1回となる今回は、最初に「マイコンにストレスを与える環境」について説明し、次に「高温、高湿、高電圧状態で発生する不良現象とメカニズム」として「故障モード」「不良現象のメカニズム」について解説する。最後に、「不良現象のメカニズム」の説明を表にまとめる。

 第2回では、第1回でまとめた「不良現象のメカニズム」の、各不良メカニズムについて詳しく解説する。

 なお、本記事で対象とするマイコンは、あくまで正常に製造され、製造/試験工程などにおいて不良の作り込みが無いものである。マイコンの不良現象についての記事であるが、不良品を対象にしたものではない。

マイコンにストレスを与える環境とは

 マイコンにストレス与える環境要素は、次のような項目が挙げられる。

  • 高温
  • 高湿
  • 高電圧(高電界)

 マイコンの仕様を超えて、上記のような状態でマイコンが放置されたり、または動作したりすると、電気的特性が変動する場合がある。しかし、通常の使用環境ではマイコンの仕様を超えるような使い方はしないため、不良現象が現れることはない。

 では、実際どのような場合に高温、高湿、高電圧の環境にマイコンが置かれるのか? まず考えられるのは寿命加速試験だ。寿命加速試験では、高温、高湿、高電圧の環境を組み合わせて、「ストレスを一定に与え続ける試験」「周期的にストレスを与える試験」「段階的にストレスを与える試験」などを行う。試験環境はさまざまだが、大きく分けると高温、高湿で放置するか、さらに高電圧を印加して動作させるかの2種類になる。もう1つ考えられるのは、マイコンをプリント基板に実装する際の高温状態だ。マイコンをプリント基板に実装する際は、リードをプリント基板にハンダ付けするので、少なからず熱が加わる。

  • 寿命加速試験(マイコンの仕様を超えるストレス印加)
    • 高温、高湿で放置
    • 高温、高湿で、高電圧を印加し動作
  • プリント基板への実装時の高温状態

 本記事では、マイコンが一時的にでも、これらの状態に置かれた場合に、電気的特性が変動する事象のメカニズムについて解説する。

       1|2|3 次のページへ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

RSSフィード

公式SNS

EDN 海外ネットワーク

All material on this site Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
This site contains articles under license from AspenCore LLC.