マイコンの仕様を超える条件で使ったら、何が起きる?【前編】:ハイレベルマイコン講座(3/3 ページ)
「ショート」「オープン」「しきい値変動」を引き起こす原因には、次のようなメカニズムが挙げられる。
- ショート/オープン
- PN接合劣化
- オーミック接触不良
- 金属間化合物不良
- 表面汚染
- エレクトロマイグレーション
- ピンホール
- ネガティブバイアス
- しきい値変動
- 可動イオン
- ホットキャリア注入
- シリコンチップ(ダイ:Die)の物理的歪による圧電効果
ここで、マイコンの製造工程やプロセス開発に携わった方は、そもそも「可動イオン」が発生するのは製造ラインの汚染が原因で、全製造ラインを洗浄し、その他にもさまざまな対策をしなければならない一大事だ!と思うかもしれない。しかしここでは、製造工程に汚染などがない環境で、正常に製造されたマイコンのゲート酸化膜やフィールド酸化膜の残留イオンを指す。どんな製造ラインでも全く汚染がない状態はありえない。少なからず、ごくごく微量の残留イオンがあり、今回はそのような微量な残留イオンが引き起こす「可動イオン」の現象を対象とする。
ちなみに、不良品としての「可動イオン」は、各マイコンメーカーの製造ラインの管理が行き届いているため、めったに起きることはない。
表2(a)、(b)に各メカニズムをまとめた。
表2(a):マイコンの不良現象のメカニズム[クリックで拡大]
表2(b):マイコンの不良現象のメカニズム[クリックで拡大]
次回は、この表に記述されている各項目について詳細に解説する。
- 【徹底解説】バスマトリクスとは
すでにマイコンを使い込まれている上級者向けの技術解説の連載「ハイレベルマイコン講座」。今回は、2017年03月22日公開の「Q&Aで学ぶマイコン講座(36):ハーバードアーキテクチャって何?」で言及されている「バスマトリクス」に着目し、詳しく解説していく。
- ホットキャリアによるマイコンの不良
すでにマイコンを使い込まれている上級者向けの技術解説の連載「ハイレベルマイコン講座」。今回は、マイコン内のMOSFET(金属酸化膜半導体電界効果トランジスタ:Metal-Oxide-Semiconductor Field-Effect Transistor:以下MOS)で生じる不良の1つ「ホットキャリア注入(Hot Carrier Injection:以下HCI)」について、その発生原因やマイコンに与える影響などを解説する。
- マイコン製品における出荷テストとは
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前回に引き続き、マイコン製品の出荷時にどのようなテストが行われているかを詳しく解説する。今回は、前回概要を解説した以下のテストについて、具体的な方法と詳細について紹介する。
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すでにマイコンを使い込まれている上級者向けの技術解説の連載「ハイレベルマイコン講座」。今回は、実際にSTマイクロエレクトロニクスの32ビットマイコン「STM32F746」を使って、文字認識のAIプロジェクトを実行してみる。連載1回目の今回は、まず「組み込みAI」について復習した後、今回行うAIプロジェクトの概要を説明する。
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すでにマイコンを使い込まれている上級者向けの技術解説の連載「ハイレベルマイコン講座」。今回から2回にわたって、一般的なEMS(電磁耐性)のノイズ対策手法を実際に試し効果を比較し、各ノイズ対策手法を考察する。
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