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マイコンの仕様を超える条件で使ったら、何が起きる?【前編】ハイレベルマイコン講座(2/3 ページ)

» 2022年08月12日 10時00分 公開

高温、高湿、高電圧状態で発生する不良現象とメカニズム

 最初に、高温、高湿、高電圧状態で発生する現象をまとめた(表1

表1:高温、高湿、高電圧状態で発生する現象[クリックで拡大]

(1)故障モード

 マイコンを、仕様を超える状態で放置、または動作させた場合に発生する故障モードは、大きく分けると次の2つになる。

  • 短絡(=ショート、抵抗値減少も含む)/開放(=オープン、抵抗増大も含む)
  • しきい値変動

 ショートとは、主に絶縁部で発生する抵抗値の減少である。絶縁層などで、規定の絶縁抵抗値よりも実際の抵抗値が小さくなり、過大電流が流れる場合を指す。絶縁部に限らず、一定の抵抗値を維持しないといけない電気回路(ラダー抵抗、RC発振回路など)で、抵抗値が規定よりも小さくなる場合も含む。オープンとは、断線などで導通している経路の抵抗値が増大することを指す。導通部に限らず、一定の抵抗値を維持しないといけない電気回路で抵抗値が規定よりも大きくなる場合も含む。

 ショートまたはオープンが発生すると、次のような不良現象を引き起こす。

  • 論理動作不良
  • アナログ動作不良
  • 消費電流過大/過少
  • 端子のショート/オープン

 しきい値変動とは、マイコン内のMOSFET(金属酸化膜半導体電界効果トランジスタ:Metal-Oxide-Semiconductor Field-Effect Transistor:以下MOS)のしきい値が、変動することである。しきい値とは論理的には、MOSがスイッチング動作をする際にON/OFFする境目のゲート電圧を指す。また、アナログ的には、ある決められた電流値が流れる場合のゲート電圧を意味する。

 しきい値が変動すると、MOSがON/OFFしなければならない状況で、正常にON/OFFしなくなり、論理回路の誤動作の原因になる。また、発振回路、オペアンプやアナログ比較器などのアナログ回路を内蔵しているマイコンでは、流れるべき電流や出力されるべき電圧値が変動し、アナログ動作が異常になる。

しきい値の変動が発生すると、マイコンに次のような誤動作を引き起こす。

  • 論理動作不良
  • アナログ動作不良

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