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ステップダウン形DC/DCコンバーターの設計(4)たった2つの式で始めるDC/DCコンバーターの設計(6)(2/3 ページ)

» 2024年02月26日 11時00分 公開

疑似負荷の必然性

 多くのDC/DCコンバーターではV(out)から制御信号を得て出力電圧を安定化させていますので軽負荷モードではβが一定になるように、すなわちRL・ton2を一定にするように負帰還制御が働きます。つまり安定化制御が正常に機能している場合、オン時間tonは、

式F

に比例して変化しますがこのtonには回路の動作速度から決まる最小オン時間ton(MIN)があります。
 必要なtonがこのton(MIN)以下になると制御回路が動作と停止を繰り返す 「ハンチング」と呼ばれる現象を起こして連続的な安定化制御ができなくなり、リップル電圧が異常に大きくなります。
 対策としてton(MIN)を満足できる最小限のRLを疑似負荷としてコンバーターに内蔵させることが汎用的に用いられます。ですが、この疑似負荷の消費電力は効率を低下させるので効率、最大電圧、温度上昇を検討しながら最終的な値を決定します。

 待機用DC/DCコンバーターなどの常時通電される用途として軽負荷時でも高効率を維持したい場合がありますがこの場合には疑似負荷抵抗は付けられません。
 この条件で安定して制御をおこなうにはβの項に含まれる「ton2・f・RL」を一定にする必要があります。
 したがって負荷に応じて発振周波数fを低減させる制御方式を併せ持つ制御ICを選択しなければなりません。実際にいくつかの制御ICが市販されていますので半導体メーカーに問い合わせてみると良いでしょう。

*最小オン時間:スイッチS1がオンした後、オフに移る最小時間。FETの場合にはゲート充放電時間も含まれる。

リップル電圧の図式解法

 この項は理解しやすいと思われる図3を参考に図式解法で進めていきます。

図3:不連続時のリップル電圧の図式解法

 電流不連続モードでは電流波形が連続していませんのでキャパシターCへの充電時間の算出が単純ではなく、その分だけ考え方が複雑になりますが式そのものは比例計算と1次式なので図と式を見比べてもらえば理解は難しくありません。
 チョークLからキャパシターCへ充電される電荷量Qは図3での時間tcの期間中のみの部の面積であり、tc以外の期間はチョークLに電流が流れても電荷の放電が緩やかになるだけでキャパシターを充電するには至りません。
 図3でILは図形ではチョーク電流を指しますが式中ではピーク電流を意味するものとします。この図からILは三角波状ですので出力電流IOは、

式G

です。したがって(IL-IO)は次のようにILで表せます。ここでδ2はtoff’の時比率です。

5式

 充電期間tCはILがIOを超えている時間です。ILがなす三角波形で(ton+toff’)とtcの比はILと(IL−IO)の比になります。この関係からtcを求めます。

6式

 tcの時間中に流れる電流の面積として5式と組み合わせて電荷量Qを求めます。ここで電荷Qは図中のの面積です。

7式

 出力電圧V(out)はLの式(ΔI=(E/L)Δt)から次の手順で求めます。

8式

 8式7式に代入すると電荷Qを求める9式を得ることができます。

9式

リップル電圧ΔVr

 リップル電圧ΔVrは電荷Qを電圧に換算したものですからCの式(C=Q/V)に従って10式で計算します。

10式

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