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超薄型ノートPCのオーディオ設計で注目される「スマート・アンプ」小型化と品質維持を両立できるデバイス(3/3 ページ)

» 2024年03月11日 11時00分 公開
[Cirrus LogicEDN Japan]
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音量の問題を解決

 通常、スピーカーを最大音量まで駆動するには、慎重なバランス調整が必要になります。音量を過度に上げると、スピーカーに歪みが生じ、場合によっては永久的な損傷を受ける可能性もあります。音量を上げることで、スピーカー、キーボード、シャーシなどのコンポーネントが振動によりガタガタと音を立てる場合もあります。こうした振動やガタつきは、最大音量を低く設計することで回避することはできますが、その代わりに、オーディオの性能、音量の大きさ、品質や一貫性が犠牲になってしまい、結果的に映画やゲームといった全体的なオーディオ体験を低下させてしまいます。

 一般的なアンプに比べ、スマート・アンプは2倍以上の音圧レベル(SPL)を達成できる製品が多くあります。さらにPCメーカーでは、より良いオーディオ性能の実現に向けてハイエクスカージョンやフォースキャンセリングなどの最新技術を取り入れて設計した最先端のスピーカーによって、音量の大きさをはじめとしてスピーカーの性能を最大限に引き出す努力を重ねています。これら最先端のスピーカーは、高い駆動能力を備えたスマート・アンプによって最大の性能を発揮することができます。

 ノートPCで高品質なオーディオ出力信号を実現するには、設計時に十分な低音、低歪み、バランスの取れたサウンドおよび、筐体の振動を防ぐ仕組みに配慮する必要があります。スマート・アンプは、ハードウェアとソフトウェアを組み合わせ、筐体の振動に起因するガタつきを最小限に抑えるとともに、スピーカーを損傷から保護しながら、音量の大きさ、品質、一貫性を最大化することができます。

高い品質を保持

 オーディオ品質の定義は人それぞれです。しかし、一般的には、音量の大きさ、低歪み、バランスのとれたレスポンス、透明感、ガタつきの少なさなどが注目されます。スマート・アンプは、マイクロスピーカーを低音域の限界まで駆動し、多くの場合、周波数範囲を拡張してより深い低音を実現します。低音、中音、高音など特定の周波数範囲が突出していない場合は、バランスの取れた、もしくは「フラットな」周波数応答が可能です。この手法をオンチップのアルゴリズムで実現することによって、より快適なサウンドを得ることができます。

 歪みを低く抑えることは、特に音声通話において、明瞭さと伝わりやすさの向上につながります。また、エンハンスメントアルゴリズムは、スピーカーの周波数特性を測定して不要なピークや谷をキャンセルすることで、スピーカーの周波数応答のバランスを整えます。

 図5に示すように、オーディオにおいて振動は常に変化し扱いにくい問題です。この“ガタガタ音”は、着信音や人の声で発生したり、ポップミュージックでは発生しなかったりと、コンテンツによってさまざまです。スピーカーの振動は、共振による連鎖反応でキーボードやシャーシなどの特定部分でガタガタ音を発生させる原因にもなります。不要な振動は不快な体験となり、ユーザーはこのガタガタ音を音声の歪みとして認識することもあり、明瞭さや伝わりやすさ、分かりやすさが損なわれることになります。

図5:スマート・アンプのアルゴリズムは大音量で高品質なオーディオを確保しながら、超薄型ノートPCのガタつきを最小化 図5:スマート・アンプのアルゴリズムは大音量で高品質なオーディオを確保しながら、超薄型ノートPCのガタつきを最小化[クリックで拡大] 出所:Cirrus Logic

 オンボードの信号処理機能を備えたスマート・アンプは、高度なエンハンスメントアルゴリズムを使用してより高い品質を実現し、ダイナミックな低音拡張アルゴリズムによって、あらゆる音量レベルで低音の大きさと深さを最大化します。また、高速チューニング処理機能は、タブレットモード、テントモード、ノートPCモードなどの異なるフォームファクターごとに音質を最適化します。そして、バッテリー管理アルゴリズムは、バッテリー電圧の低下に応じてチューニングを調整し、音量の大きさを最大化しながら歪みを最小化することができます。



 ノートPCのオーディオは、持ち運ぶ頻度の増加やリモートワークの普及など、この10年で私たちの個人および仕事の両面で生活の一部になりました。一方で、ノートPCのサイズは劇的に小さくなり、超薄型、軽量で柔軟なフォームファクターにシフトしています。さらに、リモートやモバイル環境で使用される機会が増えたことで、オーディオの課題は複雑になっています。スマート・アンプの活用は、こうした課題を解決するアプローチの一つになりそうです。

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