パッケージの最も重要な役割は、外部環境からマイコンチップを守ることです。裸の状態のマイコンチップは非常にセンシティブです。ちょっとしたごみ(パーティクルと呼ばれる異物など)や水分、光(特に紫外線)、熱などの影響で動作しなくなります。そこで、マイコンチップをこれらの外部環境から保護するためにパッケージが必要になります。
マイコンチップをシリコンの状態でPCBに電気的に接続することは、不可能ではないものの特殊な製造設備が必要になり、製造コストが高くなります。なにより、マイコンの扱いが非常に複雑になります。そこで、パッケージングを行うのですが、マイコンチップをプラスチックなどで完全に囲ってしまうと、外部と電気的接続ができなくなります。そのため、リードと呼ばれる電極を外部へ出して、PCBとの電気的接続を確保します。リードにはさまざまな形状があり、単なる電極の場合もあります。
マイコンが動作すると、非常に微小ですが熱を放出します。この熱がパッケージの中にこもり、長時間動作させるとマイコンチップの温度が上昇して、誤動作を引き起こす場合があります。そのため、放熱もパッケージの重要な役割です。マイコンの発熱については「Q&Aで学ぶマイコン講座(40)マイコンの発熱 ―― 検討事項と熱計算方法」を参照してください。
上述の通り、シリコン状のマイコンチップをPCBに実装するとコストが高くなり、扱いも複雑になります。そのため、パッケージングをして取り扱いを簡単にすることも、重要な役割の1つです。
マイコンの微細化が進むにつれて、耐ノイズ性もマイコンを使用する際の課題になっています。マイコンチップ自体のノイズ対策も進んでいますが、パッケージにもノイズ対策が施されています。例えば、裏面にグランドパターンを設けて、グランド電位を安定させるといった工夫が施されています。
パッケージの材質は、過去にはセラミックなどが使われていたこともありますが、現在はプラスチックが主流です。プラスチックの素材は、マイコンメーカーによってさまざまで、社外秘になっています。
一般的には、耐燃性や耐久性に優れた素材が使われていますが、詳しく知りたい場合は各マイコンメーカーに問い合わせてください。また、パッケージのマニュアルを出しているメーカーもあるため、それらを参照することもできます。
パッケージの外形はさまざまで、薄型や小型といった特徴をもつものがあります。STM32ファミリーの場合は、データシートに寸法図が記載されています。図1は、STM32G081xBマイコン*2)のデータシート*3)に記載されているWLCSP25の寸法図です。寸法図はPCBのパターンを設計する場合に必須です。
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