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A-Dコンバーターの4つのトラブル事例と対策Q&Aで学ぶマイコン講座(107)(3/4 ページ)

» 2025年09月30日 15時30分 公開

2回変換しないと正確に変換できない

 サンプル&ホールド型A-Dコンバーターにおいて、被測定電圧を保持するコンデンサーの電圧変化(サンプリング時間)を待たずに変換を開始してしまうと、コンデンサーの電圧が安定する前に変換が始まり、その結果、正常な変換値が得られません。続けて同じ電圧を変換すると、コンデンサーの電圧が安定しますので、その変換では正常値が得られます。

 2回変換しないと正確に変換できないという場合は、このような現象がほとんどです。

 サンプリング時間については「Q&Aで学ぶマイコン講座(12):サンプル&ホールド型A-Dコンバーターのサンプリング時間はどうやって決めるの?」で詳しく解説しています。復習を兼ねて、サンプリング時間について簡単に考察してみます。

 図3にSTM32ファミリーのサンプリング回路と、その計算式を示します。

<strong>図3:サンプリング時間の計算</strong> 図3:サンプリング時間の計算[クリックで拡大]

 ここでは、Nビット分解能のA-Dコンバーターで、1/4LSBの誤差の値になるまで時間をサンプリング時間とします。CADCが電圧保持用コンデンサー、被測定電源の出力抵抗がRAIN、A-Dコンバーターの端子からモジュールまでの配線の直列抵抗がRADCです。理論上、基板の寄生容量や端子リーク電流やマイコンの端子の保護ダイオードの影響も受けますが、実際には影響が小さいので、ここでは無視します。

 サンプリング時間は(1)式で求められます。例えば、N=12ビット、CADC=12pF、RADC=1kΩ、RAIN=3.6kΩとすると、サンプリング時間は(2)式から535.7ナノ秒になります。

 CADCやRADCはマイコンのデータシートに記載されていますが、RAINはユーザーの回路に依存します。しかし、ユーザーにRAINを聞いてみると、多くの方が「分からない」と答えます。すなわち、RAINが不明な状態で、適当にサンプリング時間を設定しているので、正常値が得られないということです。こういう場合は、実測してRAINを推定することをおすすめしています。既知の電圧を変換してみて正常値を得られるサンプリング時間を探し出し、さらにその時間に余裕を持たせて決めると、比較的うまくいきます。

 まれですが、RAINが大きすぎて、マイコンで設定できるサンプリング時間では不足する場合があります。そのような場合は、2回以上変換を繰り返して、正常値が得られる条件を探し出しましょう。

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