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ネットワークのタイミング管理高精度のクロックでシステムの信頼性を高める(1/3 ページ)

ネットワークの信頼性を決める要因の1つに、クロックの精度がある。高精度のクロックを使ってシステム内の同期を確立することで、品質の高いサービスの提供が可能になる。

» 2006年11月01日 00時00分 公開
[Jim Olsen/Kishan Shenoi(米Symmetricom社),EDN]

 音声通信、IPTV(インターネットプロトコルテレビ)、オンラインゲームなど、有線/無線の通信システムを備えたリアルタイムアプリケーションが増えてきている。こうしたアプリケーションは、信頼性の高いPRS(primary reference source:プライマリ基準ソース)に基づいたタイミング信号に継続的にアクセスすることによって高品質のサービスを保証している。正確で安定したタイミング信号は、ネットワークに接続されたノード間の同期を維持する上で非常に重要な役割を担う。各ノードの同期が取れていれば、ハンドシェイクやパケット転送がスムーズに行え、遅延、エラー、パケットの損失が減少する。また、使用可能な帯域幅も広くなる。

 GPS(global positioning system:全地球測位システム)は、理想的な基準信号である。なぜなら、容易にアクセスでき、UTC(universal coordinated time:世界協定時刻)に対応付けることが可能であり、多くのアプリケーションにとってコストが安くつくからだ。

 しかし、GPSへの連続的なアクセスが可能であることが常に保証されているわけではない。GPSの基準信号が利用できない場合には、ネットワークエレメント(ネットワーク上の各種要素)の同期が外れ、信頼性の高いネットワークリンクを維持するのが困難になる。その結果、ネットワークの効率と信頼性が著しく低下し、パケットの損失、ネットワーク上の競合の増加、全体的なサービス品質の低下が生じる。これらの問題は、企業の収益に直接的な影響を与える。携帯電話市場がその代表的な例だ。「通話が途切れるから」というのが、依然としてサービスプロバイダを変更する際にユーザーが挙げる主な理由の1つである。しかし、その原因としては、通話エリアの広さが問題なのではなく、ネットワークの安定性が問題となっているケースが増えているのだ。

ホールドオーバー発振器

 GPSの基準信号を失った場合には、プロバイダがPRS信号を回復させるまで、ネットワークシステム内の発振器が最後に得た有効な周波数信号を保持する。本稿では、この発振器を「ホールドオーバー発振器」と呼ぶことにする。このホールドオーバー発振器の品質/性能と、ホールドオーバーモードに入ってからどれだけの時間、この発振器が効果的に動作し続けられるかが、ネットワークのサービス品質を決定する。例えば、ルビジウム発振器であれば、Stratum 1の品質で同期とタイミングを維持することができる。これを利用すれば、ホールドオーバー期間が長くなってもサービスを持続することが可能である*1)

 ホールドオーバー発振器には、ホールドオーバー動作に入る際に重要となる特性がいくつか存在する。特定のアプリケーションやネットワークエレメントに対して、最も効果的な発振器を選択することが重要である。丹念にシステム設計を行えば周波数初期偏差を最小限に抑えることができ、ホールドオーバー性能を左右する主な性能要因は、周波数エージングと温度特性のみとなる。

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