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電源サブシステム入門各方式の課題を再確認!(3/4 ページ)

» 2007年03月01日 00時00分 公開
[Paul Rako,EDN]

スイッチングレギュレータ

 スイッチングレギュレータは、インダクタ(またはトランス)、トランジスタなどで構成される。図2(a)は、降圧型スイッチングレギュレータの構成を表している。この回路の動作は、図2(b)の水車に似たものとなる。インダクタ部分の電流の挙動は、水車が回転する様子に例えることができる。同様に、昇圧型のコンバータの動作も水車の動きに例えられる(図3)。


図2 降圧型レギュレータの原理 図2 降圧型レギュレータの原理 降圧型レギュレータは、入力DC電圧を基に、より低いDC電圧を生成する(a)。その原理は(b)に示した水車に例えられる。
図3 昇圧型レギュレータの原理 図3 昇圧型レギュレータの原理 昇圧型レギュレータは入力DC電圧を基に、より高いDC電圧を生成する(a)。その原理は(b)に示した水車に例えられる。

 磁気回路が多くの設計者を悩ます理由は、その高いリアクタンスにある。つまり、電圧/電流の挙動が抵抗とは少し異なる点が問題となる。降圧型/昇圧型コンバータの原理を直感的に理解できれば、チョーク、SEPICのようなより複雑な設計も理解できるであろう。

図4 絶縁型コンバータ 図4 絶縁型コンバータ 一般に、絶縁型コンバータでは、フォワード型(a)とフライバック型(b)が用いられる。

 トランスを使えば、図4のように絶縁型のコンバータを構成することも可能である。図4(b)のフライバック型コンバータでは、トランスがチョークとして使用される。スイッチが閉じると、1次側の電流が増え、エネルギが蓄えられる。スイッチが開くと、そのエネルギが2次側に放出される。設計者がフライバック型コンバータを好んで使う理由は、低コストであることに加え、互いにほぼ追従し合える複数の出力を生成できるからである。

 ほとんどの設計者は、堅牢なスイッチングレギュレータの設計に苦労している。まず安定性の問題がある。スイッチングレギュレータの複雑な制御ループを安定させるのは難しい。一般に、スイッチングレギュレータが正常に動作すると、出力電圧にリップルが発生するからだ。低調波の信号を発生させるものもあるし、制御ループでランプ信号を扱わなければならない。大容量のセラミックコンデンサが手ごろな価格で手に入るようになり、設計者の多くは出力部分に電解コンデンサではなくセラミックコンデンサを使うようになった。セラミックコンデンサはESR(equivalent series resistance:等価直列抵抗)が小さいため、リップル電圧はほとんど発生しないが、発振が起きる可能性がある。また、アナログ回路を起動する際には、このリップル電圧の存在自体が設計の要件に反している可能性もある。このリップルの問題を解決するには、ポストレギュレータを使うなどの方法を取り入れる必要がある。

 さらに一般的な問題として、ノイズが電源ラインに混入したり、電磁波として放射されたりする可能性がある。最悪なのは、量産直前に製品をFCC(Federal Communications Commission)やCE(Conformite Europeenne)に送って試験を受けるまで、設計者がこの問題に気付かないケースだ。製品がエンドユーザーに近いところに渡ってから問題を解決しようとするより、最初からノイズを発生させないようにしておくべきなのはいうまでもない。

 リニアレギュレータの場合と同様に、スイッチングレギュレータでも熱の問題は発生し得る。大半の降圧型レギュレータは、FETよりもダイオードで大きな熱を発生する。図5に示したのは、National Semiconductor社のオンライン設計ツール「WEBENCH」で作成されたサーマルプロット図である。これは、スイッチングレギュレータ周辺の発熱をシミュレーションしたものだ。これにより、ダイオードD1が基板上で最も温度の高いコンポーネントであり、隣接するレギュレータICを加熱していること分かる。この問題を解決するために、同期式降圧型レギュレータでは、ダイオードの代わりに逆位相で動作する2つ目のFETが使用される。

 ここまでに述べた問題は、基板のレイアウトがまずい場合によく見られる。性能に優れたスイッチングレギュレータを用いる場合でも、その配置がまずければ問題が発生する*2)、*3)。設計者は、レギュレータICベンダーのアプリケーションエンジニアを活用すべきだ。アプリケーションエンジニアに設計を見直してもらい、基板を作製する前に対策を行うことが肝要である。

図5 熱特性のシミュレーション結果 図5 熱特性のシミュレーション結果 このサーマルマップは、ダイオードD1が回路内で最も高温になるコンポーネントであることを表している(提供:National Semiconductor社)。

脚注

※2…Rako, Paul, "Circulating currents: The warnings are out," EDN, Sept 28, 2006, p.50.

※3…『DC-DCコンバータのグラウンドバウンスを抑える』(Jeff Barrow氏、EDN Japan 2006年12月号 p.79)


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