電力線通信に対して、ワイヤレス/RF通信が備える主な利点の1つが柔軟性である。「Z-Wave」や「ZigBee」といった、HAネットワークに向けたワイヤレス技術がいくつか開発されている。また、Echelon社のLonWorks、SmartLabs社のINSTEON、KNAアソシエーションの「European KNX」などのホームネットワーク技術も、柔軟性を持たせるために、電力線に加えてワイヤレス通信にも対応している。
しかし、最近までRFベースのネットワークは信頼性に大きな課題があった。RFベースのネットワークでは、ライセンスの問題を回避するために、電子レンジや電話機などの製品用に割り当てられた、免許が不要でオープンな周波数帯域を利用することが多い。例えば、Z-Waveは900MHzのISM(産業/科学/医療)帯域を利用するが、この帯域は米国と欧州で異なる。ZigBeeもこの帯域を利用しているが、今後は2.4GHz帯域で開発が進められる。2.4GHz帯域の周波数は全世界で利用することができるため、世界中で使える無線機器を設計することが可能となる。しかし、いずれの場合でも、この帯域を利用するその他のユーザーが存在するため、深刻な電波干渉の問題が生じる可能性はある。
RF通信を活用しようとする企業は、この干渉の問題に取り組んできた。例えば、ZigBeeアライアンスに加入している米Ember社、米Freescale Semiconductor社、米Microchip Technology社、米Texas Instruments社は口をそろえて、「最新版である『ZigBee 2006』は、Wi-Fiなどによる帯域内干渉があっても堅牢な動作を保証する」と主張している。2006年12月にリリースされたZigBee 2006仕様に基づくチップは、すでに主要各社から発表されている。
干渉の問題を解決し、信頼性の高いネットワークの動作を保証する上で、ソフトウエアも重要な役割を持つ。ZigBee用アプリケーションソフトウエアのベンダーである米Airbee Wireless社の幹部らは、「ZigBeeプロトコルの実装により、干渉の多いRF環境におけるネットワークの性能を改善することができる」と述べる。例えばAirbee社のソフトウエアには、信号強度を測定し、チャンネルやメッセージ経路を選択することにより、干渉源に積極的に対応するネットワーク管理機能を含んでいる。固定のルーターも信号強度を利用して、三角測量により干渉源を特定し、ユーザーに警告を与えることが可能である。
それでもまだほかの問題が存在する。電力線によるネットワークを推進する企業は、RF通信の課題として、RF機器の通信距離が限られていることや、電源として電池が必要になるかもしれないことを問題として指摘する。しかし、「RFを使ったHAネットワークは、自己構成型のメッシュアーキテクチャを採用するため、距離は問題にならない」とRF技術の擁護派は主張する。メッセージを中継できるノードを適切な位置に追加するだけで、すべてのノードが接続できるという(図2)。
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