多くのベンダーが、ほとんどのカラーセンシングアプリケーションに十分に対応できる安価なカラーセンサー(大量購入時で3米ドル以下の価格帯)を供給している。機能に若干の違いはあるものの、いずれのセンサーも基本的には赤、緑、青の強度を測定し、その値を出力する。それらの値を使用すれば、正確なCIE色座標(X、Y、Zの3値)を計算することができる。ただし、このような機能を実現するには、事前に2つの校正を行うことが前提となる。
2つの校正のうちの1つは、各色のLEDの輝度とセンサーによる測定値がリニアな関係にあるという前提に基づいて行うことになる。このリニアな関係を基に、センサーによる測定値をLEDを調光する回路への設定値に変換するのである。
また、センサーによる測定値とCIE色座標の3値との関係も明確にする必要がある。それには、まず各LEDをそれぞれの最大輝度に設定し、色度計によってセンサーの出力とともにCIE色座標の3値を記録する。この手順をすべてのLEDに対して繰り返し、得られたデータに基づいてセンサーの測定値とCIE色座標の関係を明確にするのである。この校正は、上述した校正とは別に行う必要がある。
上記2つの手順は、いずれも面倒なものに感じられるかもしれない。実際、これらは相当に手間がかかる作業である。特に、この機能を実現するためのファームウエアの開発には多大な工数がかかり、多くのLED装置の設計における最大の障壁となっている。このファームウエアの開発方法の説明は紙幅の都合上、割愛するが近道はある。というのも、高輝度LED市場に参入しているマイクロコントローラベンダーの多くは、カラーセンサーを利用したフィードバックシステムに対応したファームウエアをすでに開発しているからだ。つまり、1つ目の校正手順において既存のファームウエアを活用すればよいのである。
最後に、カラーセンサーを利用したフィードバックシステムを設計する際の留意点をもう1つ挙げておく。それは、「熱は精度の大敵」ということだ。
本稿で説明したフィードバックシステムを用いれば、LEDの温度変化によって生じる誤差をある程度補正することができる。しかし、カラーセンサー自体も極端な温度変化に対してはそれなりの誤差を持つ。そのため、例えば高温環境での正確な測定が求められる場合には、その誤差が問題になる可能性がある。従って、精度が重要であるなら、システムの温度を低く抑えるための対策を講じる必要がある。
また、温度の問題は校正時にも重要なポイントとなる。LEDまたはカラーセンサー(あるいはその両方)が高温環境下にある状態で校正を行ったとしよう。そうすると、実使用時には照明装置は常温で動作しているのに、低い精度しか得られなくなるので注意が必要だ。
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