理想的なホワイトノイズの発生器は、周波数軸の全域にわたってフラットな電力密度を持つノイズを発生する。こうしたノイズ発生器は、特に低い周波数/直流における回路特性を試験する際に必要になる。
ところが、フリッカノイズ(1/fノイズ、ピンクノイズ)と呼ばれるノイズ成分の存在が、数ヘルツ以下といった超低周波領域までホワイトノイズを発生させることを困難にする。例えば、半導体素子によって発生させたノイズには通常フリッカノイズ成分が含まれている。すなわち、そのノイズは、数十ヘルツから数キロヘルツの周波数を境にして、周波数が低くなるとともに電力密度が増大する。
また、値の大きい抵抗から発生するノイズもフリッカノイズ特性を持つ。そのフリッカノイズの特性と大きさは製造プロセスに依存する。低雑音の製造プロセス品で値の小さい抵抗を使えば、電力密度が周波数に対してほぼフラットなホワイトノイズが得られる。しかし、抵抗値が低いと、ノイズ電力も小さくなる。その場合、所要レベルまで増幅しなければならず、そうすると増幅回路からのフリッカノイズ成分が重畳されてしまうことになる。
オペアンプ製品によっては、入力電圧ノイズにフリッカノイズ成分を含まないものもある。しかし、そのようなオペアンプでも、入力電流ノイズにはフリッカノイズ成分が含まれる。このノイズ成分はオペアンプの入力部に使用する抵抗の値が大きくなれば、オペアンプ回路の出力では相当量のフリッカノイズ成分となる。
図1に示すのが、本稿で紹介するノイズ発生器である。これであれば、フリッカノイズ成分を含まないホワイトノイズを発生させることができる。この回路に使用したMaxim Integrated Products社のオペアンプ「MAX4238」は、入力電圧ノイズにフリッカノイズ成分を含まない。オペアンプの入力電圧ノイズは、抵抗で構成したフィードバック経路によって増幅されるが、そこで用いる抵抗値は、抵抗自体、あるいはオペアンプの入力電流ノイズからのフリッカノイズ成分が大きくならないよう低い値に設定している。
この回路の出力ノイズ電圧の周波数依存性は、図2のようになる。このとおり、ほぼフラットな特性が得られている。ノイズの電圧密度は4μV/√Hz〜5μV/√Hzである。なお、このノイズ電圧の密度は温度により増減するので、計測に使用するときには回路の温度を一定に保持する必要がある。
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