センサー、静電トラップなどの用途では、ある程度の出力電流を流せる高電圧の電源が必要となる。このような電源には、無負荷時の電流が少なく、簡素で小型であることが望まれる。図1の回路はこうした要求に応えるもので、絶縁された正または負の高電圧を出力できる。2次側補助巻線によって、出力電圧に比例する低いフィードバック電圧を生成するところがポイントである。このフィードバック回路はさほど値の大きい抵抗を必要とせず、消費電力のロスを減らすことができる。また、フローティング出力も可能となっている。
この回路で用いている「MAX1605」(Maxim Integrated Products社製)は液晶ディスプレイ用の電源ICであり、スイッチングレギュレータを構成するPWM回路、誤差アンプ、電源スイッチを備えている*1)。同ICにより、フィードバック用の2次巻線と、2〜3個の出力用巻線を備えたトロイダルトランスの1次巻線を駆動する。なお、「BAV21」は、高耐圧で逆方向電流が少ない一般的なダイオードである。
図1に示す定数を用いた場合、この回路は500Vの電圧を生成することができる。その特性は、図2と図3の示すようなものとなる。なお、フィードバック部分の抵抗比を調整することによって、出力電圧は±30%の範囲で変更することが可能である。また、整流器、コンデンサ、出力巻線モジュールを加えるか削除することで、出力電圧の数を増やしたり、減らしたりすることもできる。
この回路では、一般的なスイッチングレギュレータと同様に、EMI(Electro-Magnetic Interference)や発振の問題が発生し得る。そのため、回路の設計においては、プリント配線板のレイアウトを注意深く行うとともに、フィルタリング、デカップリング、シールディングなどのアナログ的な面に注意を払う必要がある。出力電圧には約1%ほどのリップル電圧が発生するが、出力回路にRC/LCフイルタ回路を直列に付加することで、その値を小さく抑えることができる。
※1…"30V Internal Switch LCD Bias Supply," MAX1605 data sheet, Maxim, October 2003
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