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磁気センサー活用への第一歩用途に最適な製品を選択するために(3/5 ページ)

» 2008年11月01日 00時00分 公開
[Paul Rako,EDN]

誘導型センサー

 ここまでに紹介したように、磁気測定の用途は広い分野にまたがっている。当然、それぞれの用途に適した磁気センサーの種類は異なり、適切な選択が不可欠だ(図2*6)。ここからは、各種磁気センサーの原理、それぞれの特徴などについてまとめた上で、代表的な製品を紹介していこう。


図2 各種磁気センサーの感度の範囲(提供:Honeywell社) 図2 各種磁気センサーの感度の範囲(提供:Honeywell社) センサーの種類によって感度、応答範囲に数桁の違いがある。

 最初に取り上げるのは誘導型センサーである。これは最も基本的な磁気センサーだと言える。誘導型センサーは磁気コアにコイル(サーチコイル)を巻いた構造を成し、コイルと交わる磁束が変化すると、コイルの両端に電圧が誘起される(電磁誘導)ことで機能する。このタイプのセンサーが検出できる磁界はACであり、DC磁界は計測できない。その一方で、少しの変更を加えることでAC電界の検出にも利用可能である。検出できるAC磁界の上限周波数は磁気コアの特性によって決まる。

 誘導型センサーは低価格のガウスメーターによく使用されている。健康管理機器の分野が大きな市場である。

写真2 誘導型センサーの例(提供:AlphaLab社) 写真2 誘導型センサーの例(提供:AlphaLab社) 誘導型磁気センサーではAC磁界しか測定できない。

■製品の例

 誘導型センサーは安価であり、300米ドル程度で販売されている(写真2)。AC磁界の計測に用いられ、電力線やモーターが発生する磁界を測定できる。また、配線に断線があるとそこで磁界が不連続になるので、断線個所の検出にも利用可能だ。また1軸用のものと3軸用のものがある。

 製品の例を挙げると、米Sypris Test&Measurement社(以下、Sypris社)から25Hz以上のAC磁界を3軸で測定できる「4100シリーズ」が供給されている。このシリーズの製品である「4180」の価格は324米ドルとなっている。

ホール効果型センサー

 誘導型センサーには、DC磁界を測定できないという大きな欠点がある。一方、この欠点を持たない代表的なものがホール効果型センサーである。ホール効果とは、半導体に電流を流し、それに直交する向きに磁界を印加すると、電流と磁界の両方に直交する起電力が発生する現象のことだ。ホール素子からの出力は磁界の強度に比例する。これをセンサー素子に利用したものがホール効果型センサーである。

 ホール効果型センサーは1軸方向にしか働かないが、3個のセンサーを組み合わせることで3軸の測定に対応した製品も供給されている。この3軸センサーは、地磁気の測定に利用できる。

 ホール効果型センサーの弱点は正確さに欠けることである。この弱点は、経時変化や温度変化によって特性が変動しやすいことに起因する。後述する核磁気共鳴型センサーは、この種の特性変動が小さい。そのため、ユーザーによっては、特性変動の対策として、数台程度の低価格なホール効果型センサーに対して1台の割合で核磁気共鳴型センサーを用意し、ホール効果型センサーの校正に使用している。

■製品の例

写真3 卓上型ガウスメーターの例(提供:Sypris社) 写真3 卓上型ガウスメーターの例(提供:Sypris社) 1軸用のDCガウスメーター「6100」(Sypris社製)。±0.25%のDC精度を実現している。

 ホール効果型センサーは融通性が高く応用範囲も広い。製品の価格は、1軸用では500〜800米ドル、3軸用だと1000米ドルを超える。Sypris社の「5100シリーズ」はDC磁界、または20kHzまでのAC磁界を1G〜20kGの範囲で測定でき、精度は2%である。同シリーズの「5180」であれば、周波数は30kHzまで、磁界範囲は30kGまで、精度は1.1%という値を実現している。同製品は、ピークホールド機能を持ち、アナログ出力とUSBインターフェースを備える。価格は1325米ドルだが、985米ドルの「5170」などもある。

 Sypris社は卓上用センサーも供給している。ガウスメーターの「6010」(写真3)は価格が2492米ドル、ガウスメーター/テスラメーターの「7010」は4365米ドルである。7010は精度(DC測定時)が±0.25%で、磁束密度、周波数、温度、最小/最大値、プラス/マイナスのピーク値などを同時に測定/表示できる。3軸用としては「7030」があり、価格は6864米ドルである。

写真4 DC磁力計とセンサープローブの例(提供:AlphaLab社) 写真4 DC磁力計とセンサープローブの例(提供:AlphaLab社) このセンサープローブは直線状で用いるほか、L字型に曲げた状態でも使用できる。1000回曲げても破損しない。

 写真4に示すAlphaLab社のDC磁力センサー/センサープローブは価格が380米ドル。10kGまで測定でき、精度は周囲温度が華氏30〜110度(−1.1〜43.3℃)の範囲でDC/AC磁界に対して±2%である。測定ユニットは擬似実効値を出力し、45Hz〜2kHzの範囲に対応できる。NIST(National Institute of Standards and Technology:米国技術標準局)基準に準拠した校正が行われている。

 そのほかのホール効果型センサーとしては、RS-232C経由でパソコンに接続できるガウスメーター「VGM01」がある(米Hirst Magnetic Instruments社製)。また、スイスMetrolab社は3個のホール効果素子を1個のICに組み込んだ3軸用センサープローブ「THM1176」を供給している(写真5)。THM1176は、周波数範囲がDC〜1kHz、強度範囲が0〜20Tの磁界を3軸で測定でき、大きさは193.54mm3。また、USBインターフェースを備え、PDA端末に測定結果を表示することが可能だ(PDA端末はオプション)。同製品、PDA端末、ソフトウエアはGMW Associates社から入手できる。

写真5 ホール効果型の3軸センサープローブ(提供:GMWAssociates社) 写真5 ホール効果型の3軸センサープローブ(提供:GMWAssociates社) USB経由で、センサー出力(測定値)をPDA端末に表示することができる。

 ドイツChen Yang Technologies社の「CYHT-201」もホール効果型センサーであり、DC/AC磁界の測定が行える。精度はDC〜200kHzの範囲で±5%で、測定値は4.5桁の液晶ディスプレイに表示される。

 米Tel-Atomic社はハンドヘルド型のホール効果型テスラメーター「TeslaMeter 2000」を供給している。価格はトランスバースプローブを含めて719米ドルである。精度はDC測定で±0.5%、AC測定で±2%。このほかに、同社は150米ドルのアキシャルプローブも提供しており、3軸用プローブも開発中である。

 米Lake Shore Cryotronics社はハンドヘルド型ガウスメーター「410」を供給している。測定範囲は0.1G〜20kG(0.01mT〜2T)、分解能は100mG、精度はフルスケールに対してDCで±0.1%、ACで±5%、周波数範囲は10kHzまでとなっている。ピークホールド機能や、フィルタ処理機能、相対値表示、ゼロ点表示、警報音発生などの付加機能を備える。

 より小型な製品としては、米Carlsen Melton社の「GM-200A」が329米ドルで入手できる。同製品を使えば、10kGまでの磁界を精度2%、分解能1Gで測定可能である。なお、校正証明を入手するには50米ドルを要する。

 ハイエンドのホール効果型センサーとしては、ニュージーランドGroup3 Technology社のテスラメーター「DTM-151」がある。価格は4390米ドルで、DCおよび周波数の低いAC測定に対応する。精度はフルスケールの±0.01%、分解能は20ビットである。同社は、これよりやや低価格な「DTM-133」も供給しており、その価格は2380米ドル。リニアリティ補償機能を備え、精度は0.03%、分解能は最大10ppm、温度安定性は100ppm/℃である。これら2製品はGMW Associates社が販売している。


脚注

※6…Caruso, Michael J; Tamara Bratland; Carl H Smith, PhD; and Robert Schneider, "A New Perspective on Magnetic Field Sensing," Honeywell Inc, May 1998


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