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インターリーブ動作の臨界モードPFC制御IC、96%以上の高効率を実現

» 2009年04月01日 00時00分 公開
[EDN]

 フェアチャイルドセミコンダクタージャパン(以下、フェアチャイルド)は2009年2月、インターリーブ動作を用いた臨界モード方式(BCM:Boundary-Conduction Mode)のPFC(力率改善)制御IC「FAN9612」を発表した(図1)。AC-DC変換回路において、ダイオードブリッジなどの整流回路の後段に用いるICであり、96%という高い効率を実現している。薄型テレビやデスクトップ型パソコン、プロジェクタ、小型サーバー、定格電力が100W〜1000Wの産業機器などの用途に向ける。


図1 インターリーブ動作を用いたPFC制御IC「FAN9612」 図1 インターリーブ動作を用いたPFC制御IC「FAN9612」 

 FAN9612は、フェアチャイルドのPFC制御ICの製品群において、初めてインターリーブ動作を採用した製品である。インターリーブ動作とは、整流器の後段に2系統の昇圧回路を用意し、それらを交互に動作させて、位相を180°ずらした電流を出力する方式である(図2)。同社の担当者は、「インターリーブ方式を用いる場合、2つの昇圧回路が必要になる分、ダイオードやパワーMOSFET、インダクタの個数は通常の倍になる。そのためコストも増加するが、インターリーブ動作のBCM方式PFC回路によって得られるメリットは大きい」と述べる。まず、PFC回路の基本機能として、後段の出力コンデンサに加わるピーク電流を小さくすることができる。また、BCM方式であることから連続モード(CCM:Continuous-Conduction Mode)と比べてノイズの発生量が少ない。さらに、インターリーブ動作においては出力電流の位相差が常に180°であり、両出力電流のリップルが互いに相殺されるので、EMIフィルタの負担を低減することができる。すなわち、フィルタの小型化が可能になる。また、それぞれのパワーMOSFETのスイッチング周波数が通常のシングルチャンネル方式に比べて半分になるため、スイッチング損失が低減されて電力効率も向上する。

図2 インターリーブ動作による出力電流 図2 インターリーブ動作による出力電流 青い線は昇圧回路1、緑の線は昇圧回路2による出力電流。2つの出力電流の位相が180°ずれている。実際の出力電流は、両出力電流を足し合わせて黄色の線のようになる。

 FAN9612では、インターリーブ動作の採用だけではなく、ほかにもさまざまな方法で高効率化を図っている。例えば、負荷のレベルに応じて、シングルチャンネル動作(昇圧回路を1つだけ動作させる)とインターリーブ動作の切り替えが自動的に行われる。負荷が小さいときにはシングルチャンネル動作、大きいときにはインターリーブ動作とすることにより、負荷の全範囲にわたって96%以上の効率を維持することが可能となった。

 また、パワーMOSFETの制御にバレースイッチング技術を採用することで、スイッチング損失を低減した。バレースイッチング技術とは、パワーMOSFETのドレイン電圧がインダクタの共振によって少し下がったタイミングでスイッチをオンに切り替えるというものである。さらに、ソース電流が1Aでシンク電流が1.8Aのゲートドライバを搭載しているので、パワーMOSFETの急峻なスイッチングが可能であり、それによってもスイッチング損失を低減している。

 FAN9612は、常に精度良く180°の位相差を保つための回路に特徴があるという。位相差が乱れるタイミングとしては、ライン電圧や負荷電流が変動したときや、AC-DC変換回路の立ち上がり時/シャットダウン時、シングルチャンネル動作/インターリーブ動作の切り替え時などがある。FAN9612では、こうしたあらゆる条件下でも位相差を維持できるという。

 さらに、保護機能を充実させたこともFAN9612の特徴の1つだ。各チャンネルに過電流保護機能や電力制限機能を搭載しているほか、ブラウンアウトに対する保護機能、クローズドループによるソフトスタート機能、ライン電圧に対する出力電圧の変動を最小に抑える入力電圧フィードフォワード機能、出力過電圧保護機能なども搭載している。

 FAN9612は16端子のSOICで提供され、1000個購入時の単価は1.30米ドルとなっている。

(村尾 麻悠子)

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