日産自動車(以下、日産)は2009年8月、日本、北米、欧州で2010年末に発売予定の電気自動車「リーフ(Leaf)」を発表した(写真1)。デザインは、現在の乗用車市場において大きな割合を占めるCセグメントサイズのハッチバック車となった。注目の価格については、Cセグメントのガソリンエンジン車に対して競争力を持たせる方針が明らかにされた。リーフを日本で購入する場合、国や地方自治体からの補助金を活用することで、実質の負担額は200万円台に抑えられる見込みだ。
リーフは、日産がリチウムイオン電池を搭載する電気自動車専用に開発した高剛性のプラットフォームを採用している。ボディサイズは、全長4445mm×幅1770mm×高さ1550mmで、重量は非公開。同社のCセグメント車「ティーダ」に比べると、全長が約195mm、幅が75mm、高さが15mm大きい。車室内は、大人5人が乗ってもゆとりのあるサイズになっているという。
最高出力80kW/最大トルク280Nmの走行用モーターを採用し、最高速度は140km/hを達成した。リチウムイオン電池セルには、日産とNECグループの合弁企業であるオートモーティブエナジーサプライが製造するラミネートタイプの製品を採用した。車両の床下中央に、4セルを1個とした電池モジュールを48個搭載している。その総容量は24kWhである。電圧は345V(平均)、電池出力は90kW以上。1回の充電により160km以上の走行が可能である。
リチウムイオン電池への充電は、3相200Vを使用する急速充電器を使えば、30分で電池容量を0%から80%まで充電できる。家庭用の200V電源からであれば、約8時間で0%から満充電になる。充電口は、車両前方の日産ロゴマークの部分に設置された。
リーフは、電気自動車の走行を支援する専用のITシステム「EV-ITサポート機能」を採用している。同機能は、リーフに搭載する通信ユニットを使って、日産が運営するデータセンターに接続することにより、ユーザーに対して24時間/365日のサポートを提供するというもので、4つの主な機能を備える。まずカーナビゲーションシステムと連動する機能として、エネルギー残量に応じて到達可能なエリアを地図上に示す「航続可能エリア表示」、充電スタンドの位置情報を更新する「充電スタンド自動更新」がある。また、エアコンと充電の開始時間を事前に設定できる「タイマー機能」や、自動車から離れた状態でも、携帯電話機/パソコンでインターネットに接続することで、2次電池の充電量のモニタリング、充電のオン/オフ、エアコンのタイマー設定などを行える「EVリモートコントロール・モニタリング機能」を備える。
現在開発されている電気自動車の課題の1つは、価格が高いことである。三菱自動車が2009年7月から法人向けの出荷を開始した「i-MiEV」の価格は459万9000円。この価格のうち、約2/3に当たる300万円程度がリチウムイオン電池関連のコストだと言われている。つまり、電気自動車の価格を下げるには、リチウムイオン電池の価格を低減する必要がある。
この問題に対して日産は、リーフについては、リチウムイオン電池を除いた車両を販売し、リチウムイオン電池はリースにすることで対応する方針である。つまり、車両購入時の価格にはリチウムイオン電池のコストが含まれないので、ガソリンエンジン車と同等レベルになり購入しやすくなるという寸法である。
さらに、ランニングコストに当たるリチウムイオン電池のリース料金と充電にかかる電気料金の合計金額についても、ガソリンエンジン車のガソリン料金よりも低くなるとしている。
(朴 尚洙)
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