ルネサス テクノロジは2009年10月、PND(Personal Navigation Device)やカーナビゲーションシステム(以下、カーナビ)向けのSoC(System on Chip)「SH-NaviJシリーズ」の第3弾として、AV関連の機能を大幅に強化した「SH-NaviJ3(品番はSH7777)」を発表した。主に、エンターテインメント機能の充実が求められている中級/普及価格帯の組み込み型カーナビの用途に向ける。発表と同時にサンプル出荷を開始しており、サンプル価格は6000円。2011年4月から月産3万個で量産を開始する計画である。2012年10月からの量産規模は月産40万個を見込む。
ルネサスは2005年から、最先端のカーナビ向けのSoCとして「SH-Naviシリーズ」を展開している。一方、SH-NaviJシリーズは、SH-Naviシリーズの開発で培った技術をベースとし、PNDや中級/普及価格帯の組み込み型カーナビ向けに低価格化を図った製品群である。SH-NaviJシリーズとしては、2008年9月に第1弾の「SH-NaviJ1」を、2009年5月に第2弾の「SH-NaviJ2」を発表している。SH-NaviJ3は、これら2製品に比べて、プロセッサコアの動作周波数を向上しており、グラフィックス関連やマルチメディア関連の機能が大幅に強化されている。
SH-NaviJ1/J2は、2004年に発表したSH-Naviシリーズの第1弾製品「SH-Navi1」の普及版という位置付けである。これに対して、SH-NaviJ3は、2006年に発表したSH-Naviシリーズの第2弾製品「SH-Navi2V/G」の普及版となる。ルネサスのマイコン統括本部 自動車事業部で事業部長を務める村松菊男氏(写真1)は、「最先端のカーナビ向けに開発されたSH-Navi2V/Gのパッケージは、高価なフリップチップパッケージであった。これに対して、低価格であることが求められるSH-NaviJ3では、より安価なモールドパッケージを採用した。SH-NaviJ3では、ほかにもさまざまな低コスト化の取り組みを行っており、ユーザーの求める機能と価格を十分に満足できる製品に仕上がったと考えている」と語る。
SH-NaviJ3は、プロセッサコアとして「SH-4A」を搭載する。最大動作周波数は、SH-NaviJ2の400MHzを上回る533MHzとなっている。また、グラフィックスプロセッサについては、SH-NaviJ1/J2に搭載したものに対して、特に3Dの描画にかかわる機能を強化した。従来は、トライアングル3D描画、テクスチャマッピングなどの機能を備えていたが、SH-NaviJ3では、より立体的でリアルな3D描画が可能になり、より高度な3D表現が行えるようになった。さらに、グラフィックスのプログラミングインターフェースとして、業界標準となっている「OpenGL ES1.1」に対応した。これにより、パソコンで開発した3Dグラフィックスをそのまま組み込み機器に実装できるので、ソフトウエア開発の容易化や開発期間の短縮が図れるという。
AV関連の機能は、携帯電話機向けアプリケーションプロセッサ「SH-Mobileシリーズ」で開発した機能を採用することにより強化した。具体的には、ワンセグ放送などに用いられているH.264/MPEG-4 AVCに対応するマルチコーデックの動画像処理IP(Intellectual Property)「VPU5F」と、オーディオ処理用の24ビットオーディオ専用DSP「SPU2」を搭載している。これらにより、VGAサイズ(640×480)の映像を30フレーム/秒でエンコード/デコードしたり、CDのデータをMP3/AAC/WMAなどの圧縮音楽ファイルにエンコードしたりといったことが低消費電力で行える。また、SH-NaviJ2と同じく、画面がWVGAサイズ(800×480)まであれば2系統の表示が可能である。加えて、SH-NaviJ3では、1系統の表示について、24ビットカラーのデジタルRGB出力が可能になった。
(朴 尚洙)
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