STマイクロエレクトロニクス(以下、ST)は2009年11月、スイスSTMicroelectronics社でMEMS&ヘルスケア製品事業部のジェネラルマネジャを務めるBenedetto Vigna氏(写真1)の来日を機に記者説明会を行い、オムロンのアコースティックセンサー技術を採用したMEMS(MicroElectroMechanical Systems)マイクロホンにより、同社のMEMS製品群をさらに拡張すると発表した。
今回製品化するMEMSマイクロホンは、オムロンのアコースティックセンサーICとSTの制御回路を1パッケージに収容したものである。これまで加速度センサーやジャイロセンサーなど、民生機器やモバイル機器向けにMEMS製品を投入してきた同社であるが、MEMSマイクロホンの市場に参入するのはこれが初めてになるという。
MEMSマイクロホンは、従来から用いられているECM(エレクトレットコンデンサマイクロホン)に代わるものとして急速に普及し始めている。Vigna氏は、「あと5年ほどで、ECMはMEMSマイクロホンに完全に置き換わるのではないか」と予想している。
MEMSマイクロホンは、バックプレートとダイヤフラム(振動版)の間に電圧を加え、音圧によるわずかな静電容量の変化を捕捉することで音を検出するというもの。ECMに比べて、小型化が実現できる、ノイズなどの除去が容易である、機械的な振動や温度変化などの影響を受けにくい、耐久性に優れている、大量生産により低価格化を実現できる、といったさまざまなメリットが挙げられる。
今回、STが製品化するMEMSマイクロホンの主な仕様は次のとおり。単一電源動作で、電源電圧範囲は1.64V〜2.86V。消費電流は0.6mAである。S/N比(信号対雑音比)は60.5dBで、PSRR(電源電圧変動除去比)は120dB。なお、パッケージング(組み立て)や出荷テスト、販売についてはすべてSTが執り行う。
サンプル出荷は2009年12月に開始する予定である。量産出荷については2010年の第1四半期を予定しており、まずは携帯電話機を主なターゲットアプリケーションとして想定しているという。大量購入時の参考単価は約1米ドルとなっている。
Vigna氏は、「MEMSのモーションセンサーで実績があること、大量生産能力があること、オムロンの技術的サポートを受けていること。これら3つの理由から、われわれはMEMSマイクロホンの市場で成功できると確信している」と自信をのぞかせた。
(村尾 麻悠子)
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