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プリント基板のアクセシビリティを高める検証/デバッグを容易化するために(1/3 ページ)

プリント基板の検証やデバッグが非常に困難な作業となってきている。部品の高密度実装や、やりとりする信号の高速化が進んでいるからだ。こうした状況に対応するために、プリント基板を開発する際には、検証やデバッグの作業を容易に行えるよう、アクセシビリティを高める工夫を盛り込むことが求められている。

» 2010年02月01日 00時10分 公開
[Ron Wilson,EDN]

“DFD”の必要性

 プリント基板(以下、基板)の設計を検証したり、問題点の解析を行ったりする技術者が、ドリルやテスト治具、集束イオンビーム(FIB)などの手段を用いなくても、容易に信号にアクセスできること――この要件を満たすのは、基板設計者の責任の1つである。パッド間が十分に離れており、ICがそれほど複雑なものでなく、信号がより頑強なものであったころは、この要件を実現するのは難しいことではなかった。しかし現在では、基板設計者にとって、このDFD(Design for Debug:デバッグ容易化設計)の実現が大きな課題となっている。

 特に高速シリアルインターフェース(I/F)では、一部の信号は実質的に観測不可能となった。同様に端子数の多いICの下部にある信号には、アクセスすることができない。また、SoC(System on Chip)は、それ自体の内部に重要な信号や情報を隠蔽してしまっている。さらに、電源やクロック信号のネットワークのような配線は、以前はたまに観測するだけでよいものだった。それが現在では、高度な電源管理手法が導入されたことによって、機能的検証が必要な信号配線へと位置づけが変わってきている。こうしたことから、単に基板上の信号を確認するだけでも容易なことではなくなった。従って、基板設計には、プロジェクトの初期段階からの周到な計画と体系的な手法を取り入れることが必要なのだ。

 DFDは、DFT(Design for Test:テスト容易化設計)の単なる変形ではない。テスト技術者には、「この基板は出荷可能か」という問いに対し、できるだけ早く結論を出すことが求められる。一方、検証/デバッグを担当する技術者に求められることは、それとは異なる。彼らは、基板を観測し、動作に誤りがあれば、問題をたどってその根源を突き止める必要がある。そのための仕組みとしてDFDを実現するのは、DFTを実現するのよりもずっと難しいことだと言える。

 では、どのような設計を行えばDFDを達成できるのだろうか。まず、基板製品の例であるリファレンスデザイン基板の問題について考えてみよう。リファレンスデザイン基板は、顧客が任意の個所に容易にアクセス可能なものであると同時に、すぐに製造に利用できる状態に近いものでなければならない。これは、設計者がDFDについて理解する上で、格好の調査対象だと言える。例えば、ビデオ処理ICベンダーである米Stretch社は、リファレンスデザイン基板の課題と可能性を正確に把握している。同社でシステムエンジニアリング担当ディレクタを務めるAshish Thanawala氏は、「リファレンスデザインは、顧客と共有するものだが、どちらかと言えば最終製品に近い性質を持つ。顧客はできるだけ早く市場に製品を投入したいと考えるので、基板のサイズも重視する。そのため、われわれのリファレンスデザイン基板には、そのサイズに影響を与えるテストポイントを設けていない」と述べる。

 リファレンスデザイン基板において、アクセス方法を入念に検討しつつ、量産レベルに近い形で提供すれば、ICのデバッグにも十分に利用可能な手段とすることができる。Stretch社のCEO(最高経営責任者)であるCraig Lytle氏は、「この点について、今の世代では、リファレンスデザインをブリングアップ用の基板として使用することにより、何とか切り抜けている。次の世代の設計でも、その方法をとるかどうかについては検討中だ」と述べる。

体系的なアプローチ

 量産レベルに近いコンパクトさと高いアクセシビリティとの間の適切な折衷策を定めるには、設計の初期段階において多大な作業を行う必要がある。英ARM社の北米ツールマーケティングマネジャを務めるKen Havens氏は、「リファレンスデザイン基板を設計するにあたっては、顧客が何を求めているのかを理解する必要がある。多くの場合、まず顧客が開発するであろうSoCの機能を調査し、最終的なシステムがそれらの機能をどのように使用するのかを理解することから始めることになる」と述べる。

 複雑な問題に対する最初の作業は、大抵はそれをより小さな複数の問題に細分化することである。基板設計においてこの細分化を行うための1つの方法は、基板上の領域を制御と可視性によって分類することだ。本稿では基板上の配線を以下の4つのカテゴリに分類することにした。

  • 電源とクロック信号
  • アナログ信号パス
  • 高速シリアルI/F
  • デジタル信号

 以下、各カテゴリについて、どうすればアクセシビリティを高められるのか説明していく。

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