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大容量Liイオン電池用の監視IC製品群、ADI社が拡充へ

» 2010年07月08日 00時00分 公開
[EDN Japan]

 米Analog Devices(以下、ADI)社は、電気自動車などに用いられる大容量リチウム(Li)イオン電池モジュール向けの電池監視IC「AD7280」を開発している。同社は、AD7280と、電圧や温度の異常をモニターする「AD8280」、独自のシリコンベースのアイソレータ「iCoupler」などを組み合わせて、Liイオン電池モジュールの充放電監視回路に必要なIC製品群をパッケージで展開する方針である。

 AD7280は、大容量Liイオン電池モジュールを構成する個別のLiイオン電池セルの充電率(SOC:State of Charge)を監視する。1個のICで、直列に接続した6個のLiイオン電池セルを監視することができる。また、同ICをデイジーチェーン方式で接続することにより、最大96個までの電池セルの監視に対応可能だ。同ICの特徴となっているのが、各電池セルの電圧値をデジタル信号に変換するA-Dコンバータとして、分解能が12ビットの逐次比較型のものを搭載している点である。ADI社は、「当社の逐次比較型A-Dコンバータを使えば、競合他社の製品に採用されているΔΣ変調型A-Dコンバータよりも、A-D変換の開始や終了のタイミングを自由に設定することができる。この特性を生かすことにより、AD7280から得た電池セルの電圧値に関する情報と、電流検出アンプなどから得た電池セルの電流値に関する情報を同期させて監視することが可能になる。また、他社品で用いられている一般的なΔΣ変調型のものよりも変換速度が高速であることから、電池セルの監視動作をより短い時間で完了させることができる。他社ΔΣ変調型A-Dコンバータの場合、電池監視ICに接続した電池セルの電圧値を得るのに数msかかるが、当社が使用している逐次比較型A-Dコンバータでは数μsで済む。さらに、消費電流についても、動作時に最大7mA、スリープ時に4μAなどと比較的少ない」としている。

 米Linear Technology社やOKIセミコンダクタが販売している電池監視ICは、1個のICで、直列に接続した12個の電池セルを監視できることを特徴としている。これに対して、AD7280が1個のICで監視できる電池セルの数は6個にとどまっている。ADI社によれば、「1個のICで、直列に接続した電池セルについてより多くの個数を監視できるようにするには、その個数に対応した高耐圧のプロセスで製造する必要がある。しかし、その分製造コストが高くついてしまう。当社の製品は、6個までの電池セルの監視にしか対応できないものの、製造コストが比較的低くて済む耐圧30Vのプロセスを採用した」という。

 このAD7280の機能を補完するのがAD8280である。AD8280の機能は、Liイオン電池モジュールの過充電や過放電、過度な温度の上昇など防止するというもの。AD7280とAD8280を組み合わせることにより、充放電監視回路の監視プロセスを2重化することが可能になる。さらに、AD7280を一定間隔で間欠動作させて、AD7280が動作していない間はAD8280での異常検知のみを行うという手法によって、充放電監視回路全体での消費電力を低減することもできる。

 ADI社は、Liイオン電池モジュールが出力する電流値を検出する用途では、英ARM社のプロセッサコア「ARM7」を搭載したミックスドシグナルIC「ADuC703x」などを提案している。また、数百Vという高い電圧の環境下に接続されている充放電監視回路と通常の12V系の電源電圧を用いるほかのECU(電子制御ユニット)を電気的に絶縁する用途ではiCouplerを提案している。「Liイオン電池モジュールの充放電監視回路に必要なIC製品を、1社ですべて提供できるのは当社ぐらいだろう。当社のiCouplerベースのアイソレータは、国内自動車メーカーの電気自動車での採用実績があるので、この実績を核として、ほかの充放電監視回路用ICの採用を広げていく」(同社)という。

(朴 尚洙)

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