ユビキタスは2011年4月、無線LANモジュールを内蔵した電源タップ「iRemoTap(アイリモタップ)」を試作したと発表した。同社が構築するウェブベースのサービスと連動して、電源タップの各コンセントに接続された個々の電子機器の消費電力をモニタリングしたり、遠隔地からコンセントの電力供給をオン/オフしたりすることができるというものである。
iRemoTapの試作品は、特定小電力無線を用いて消費電力のモニタリングなどを行う機能を持つ海外市場向けの電源タップをベースとしている。無線LANモジュールとしては、ルネサス エレクトロニクス販売の「SA1」が組み込まれている(写真1)。ベースとした電源タップにおいて、特定小電力無線の通信と消費電力のモニタリングの処理を行っていたマイコンと、SA1をシリアルインターフェースで接続することにより、無線LANネットワークへの接続機能を実現した。SA1は、ユビキタスが開発した組み込み機器向け無線LANソフトウエア「Ubiquitous AIR NOE」を搭載している。同ソフトウエアの機能により、SA1を搭載する機器(この例の場合、iRemoTap)のマイコンの処理能力が小さい場合でも、無線LANの通信処理を行えることを特徴としている。
iRemoTapのベースとした電源タップでは、消費電力のモニタリングや電力供給のオン/オフは、電源タップ全体に対してしか行えなかった。これに対し、iRemoTapは、電源タップの各コンセントにリレーなどを追加することによって、コンセント単位での消費電力のモニタリングや電力供給のオン/オフを行えるようにしている。
iRemoTapは、Ubiquitous AIR NOEが備えるWPS(Wi-Fi Protected Setup)機能を用いることで、無線LANのルーターやアクセスポイントに容易に接続することができる。そして、無線LANネットワークに接続した iRemoTapによる電力管理は、ユビキタスが開発したウェブベースのサービス上で行う。このサービスでは、iRemoTapの各コンセントに接続した機器の消費電力をグラフなどを使って表示できる。ユビキタスは、「家庭内に広く導入されるようになった無線LAN環境とiRemoTapがあれば、節電のための“見える化”を実現できる」としている。各コンセントの電力供給のオン/オフを行う機能も、このサービスに実装されている。また、同サービスは、消費電力が一定の値を超えたときに電子メールや「Twitter」のツイートなどでユーザーに知らせる機能なども備えている。
試作したiRemoTapの外形寸法は、縦270mm×横110mm×幅35mm。ただし、「内部の回路基板や筐(きょう)体の設計を最適化することで、設置面積を約1/2程度にまで小さくできる見込みだ」(ユビキタス)という。同社は、自社で実証実験を行ってから商用化の段階に進めていく方針である。
ユビキタス社長の三原寛司氏は、「これまで当社は、組み込み機器向けのソフトウエアを事業の中核としてきた。これまで開発してきた組み込みソフトウエアは、機器単体の機能を強化するためのものだったが、今後は、複数の組み込み機器をインターネットでつなぐことによって新たな機能を実現するようなサービスの開発も手掛けていきたい。iRemoTapは、この方針を具現化した初の事例となる」と述べている。
(朴 尚洙)
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