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65nmプロセスで製造したCortex-M4Fコア搭載マイコン、低消費電力と高性能を両立

» 2011年09月27日 08時00分 公開
[EDN Japan]

図1 日本TIの佐々木幸生氏 図1 日本TIの佐々木幸生氏 

 日本テキサス・インスツルメンツ(日本TI)は2011年9月27日、プロセッサコアにARMの「Cortex-M」シリーズを採用する32ビットマイコンの製品群「Stellaris」を拡充し、DSP機能を強化した「Cortex-M4」コアの浮動小数点演算機能バージョンである「Cortex-M4F」コアを搭載する「Stellaris Cortex-M4F」を40品種追加した。低リーク電流に最適化した65nm世代の半導体製造プロセスを採用することで、消費電力を低く抑えつつ、高い性能を実現したことが特徴だという。Cortex-Mシリーズを搭載するマイコンは多くの半導体メーカーが製品化しているが、「製造プロセスは130nmもしくは90nm世代にとどまっており、比較的消費電力が大きかった。Cortex-MシリーズのARMコアを内蔵するマイコンで、65nmプロセスの採用は今回が業界初だ」(同社の営業・技術本部 マーケティング/応用技術統括部 組み込みプロセッサ・コネクティビティ マーケティング MCUチームでリーダーを務める佐々木幸生氏)と主張する(図1)。なお同社従来のStellarisでは、「Cortex-M3」コアおよび「Cortex-M4」コアを集積した270品種をラインアップしていた。

 追加したStellaris Cortex-M4Fの動作周波数は最大80MHz。消費電流はスタンバイ時に1.6μA(図2)。リアルタイムクロックを稼働させる「RTCモード」でも1.7μAに抑えた。動作時は370μA/MHzである。「Cortex-M4クラスのマイコンとしては、業界最小の消費電力だ」(同氏)という。周辺回路としては、分解能が12ビットと高い、1メガサンプル/秒動作のA-D変換器を2チャネル内蔵した他、アナログコンパレータを3チャネル集積した。さらに、PWM出力回路も16チャネル搭載する(図3)。Stellarisの従来品は8チャネルにとどまっていた。

図2 「Stellaris Cortex-M4F」の概要と特徴 図2 「Stellaris Cortex-M4F」の概要と特徴 
図3 「Stellaris Cortex-M4F」の機能ブロック図 図3 「Stellaris Cortex-M4F」の機能ブロック図  PWM出力回路を16チャネル集積した。これらを使えば、2個の3相ブラシレスモーターを1チップで制御できる。

 新製品群の用途としては、産業用オートメーション機器や、モーター制御、健康器具などの分野で、「低消費電力を求めるバッテリー駆動の携帯型機器から、高機能を実装する機器まで」(同氏)、幅広いアプリケーションを想定する。例えば、ハンディタイプのバーコード読み取り装置に応用すれば、「周辺回路として集積した高分解能のA-D変換器で光学アナログ信号を高い精度で読み取れる上に、その解析に浮動小数点演算性能を生かせる。しかも消費電力は、バッテリー駆動を実現できるほど小さい」(同氏)と説明した。

 最大256Kバイトのフラッシュメモリと、32KバイトのSRAMを集積する他、設定パラメータを保存したりデータロギングなどに利用したりできるEEPROMも内蔵している。外部インタフェースとしては、USB OTG(On-the-Go)やCAN(Contoroller Area Network)、SPI(Serial Peripheral Interface)、I2C、UART(Universal Asynchronous Receiver Transmitter)を搭載した。Stellarisの従来品とのコード互換性を維持しており、従来品に向けて開発したソフトウェアを容易に再利用できるという。価格は品種によって異なり、1.53米ドルから(1万個購入時の参考単価)。2011年9月27日からサンプル出荷を開始しており、2012年第1四半期から量産出荷を始める予定だ。評価キット「EK-LM4F232」も用意した。参考価格は149米ドル。

(薩川 格広)

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