本稿のデジタル制御を実装する過程では、制御方式の設計に続いて、この制御方式に従ってソフトウェアを記述する。I/Oレジスタの設定方法やソフトウェアの基本構成には前回から変更が無いからだ。具体的には、電圧制御の2つのCPU割り込み関数を記述する作業になる。図3に、本稿の電源の要求に適用したデジタル信号処理のブロック図(機能追加後)を示す。(a)入力電圧ゲイン補正は【1】の処理、(b)引き込み状態遷移は【5】の処理、(c)電流・電力出力制限は【2】と【3】の処理、そして、(d)ピーク電流入力制限は【4】の処理に相当する。
(d)は、スイッチング周期処理とした。その最大値を入力電圧の変化に応じて変化させるためだ。(a)は、入力電圧の波高値を観測している。波高値の更新は、入力電圧のAC周期だが、AC周期と波高値を検出するためタイマー周期処理とした。そして、(b)(c)は、出力電圧の変化に応じて変化させるため、タイマー周期処理とした。
乗算に比較してCPU所要サイクル数が多い除算*1)の実行回数は、最小実行回数となる、(d)のスイッチング周期で1回、(a)のタイマー周期で1回とし、引用する処理からは、1つの演算結果を共用するよう構成した。
最後のステップは電源の特性を確認する作業である。定常状態でのPI制御フィルタの比例係数と積分係数は、前回のフィルタ係数の調整で得られた結果をそのまま引用した。
まずは図4を見てほしい。これは数値演算ツールでシミュレーションした電源の特性で、電源の起動から定常状態に到達するまでの特性と、出力供給電流を変化させたときの特性について、PI制御フィルタ出力(実際には制御ICの内部信号)、出力供給電流、そして出力電圧を観測したものだ。(a)は入力電圧が100Vrms、(b)は200Vrmsの場合である。出力電圧の変化に応じて状態が遷移し、出力目標電圧への引き込み処理が実行されていることが確認できた。また、入力電圧波高値の異なる(a)と(b)の過渡特性がほぼ相似であることから、入力電圧に応じたゲイン補正が適切に施されていることが確認できた。
次に図5を見てみよう。これも数値演算ツールでシミュレーションした電源の特性で、(a)は出力供給電流を変化させたときの出力電圧の変化から、出力供給電力の最大値と出力供給電流の最大値を観測しており、(b)は入力電流を増加させて入力ピーク電流を求めている。いずれも、所定の最大値に制限されていることが確認できた。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.