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いまさらだけど電気・電源についておさらいしよう超入門! イチから覚える電源回路(1)(1/2 ページ)

【超入門記事です】電源の良しあしは、回路全体の動作の安定性や精度を左右する……。本連載では、電気のお話からはじまり、電源、電源回路の基本的な考え方と、その設計に必要となる基礎知識についてイチから解説する。

» 2012年06月13日 18時56分 公開
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@IT MONOistで掲載された記事を転載しています



 私たちの身の回りは電気製品であふれています。

 ノートPCにACアダプターをつないで、さあ仕事! ちょっと寒いからエアコンのスイッチを入れましょう……などなど。便利な電気製品のおかげで快適な生活を送ることができます。

 しかし、こうした機器のほとんどは電気がなければタダの箱です。つまり、当たり前のように使用している電気製品には、それまた当たり前のように“電気”が使われているのです。

 では、電気をきちんと意識して使っている人はどれくらいいるでしょうか?

 ほとんどの方が電気を意識せずに、つまり、空気や水と同じように使っていることでしょう。利用者の立場からすれば電気は特別意識するような存在ではありません。しかし、何らかの電気製品を開発する仕事に従事している方であれば、さすがに電気を意識しないわけにはいきません。製品開発の際、エンジニアは目的の機能を実現するために全力を注ぎますが、その一方で機能を実現させるために必要な電気、つまり“電源”への注力も必須となります。

 本連載では実務はもちろんのこと、趣味の電子工作などにおいて、「電源をはじめて意識した」「電源周りの設計・開発をはじめて行う」という方のために、最低限困らない程度の電気・電源の基礎知識について解説していきます。なお、本連載では初学者の方が理解しやすいよう(つまずかないよう)に、あえて突っ込んだ内容を避けて解説している部分もあります。あらかじめ、ご了承ください。

 というわけで、連載第1回では「電気」と「電源」の基礎ついて紹介します。

そもそも電気とは?

 新幹線で使用される2万Vの「駆動電源系」と、携帯電話で使用されるような3.7V「リチウム電源系」とでは扱うパワーやエネルギーに天と地ほどの差がありますが、正体はまったく同じものです。要するに、どのような開発をするにしても、開発する製品が必要とする電気を作り出せればよいわけです。

そもそも電気とは何でしょうか?

 実は、“電気のもと”は水や空気と同じように身の回りに、しかも無尽蔵に存在しています。というのも、身の回りの物質の素である「原子」そのものが電気の原料だからです。

 原子は、電気的に+(プラス)の性質を持つ「原子核」と、その周囲にある−(マイナス)の性質を持つ「電子」から構成されており、普通はこの+と−とが釣り合うようにさまざまな分子、物質が構成されています。なお、+の性質を持つ物質を“プラスの電荷”といい、−の性質を持つ物質を“マイナスの電荷(これらは「イオン」という名で知られています)”といいます。そして電気とは、何かの拍子で原子核の軌道を外れた電子、つまり「自由電子(物質内を自由に動き回れる電子)」の動き(移動)によって発生するエネルギーのことを指します。

 電気の歴史をひも解いてみると、電気の+−の存在をハッキリと証明させたのが、かの有名な“フランクリンの凧(たこ)”です。いまから約260年前、ベンジャミン・フランクリンは、雷雲の中に凧を飛ばし、「雲は+の電荷の固まりを持つ場合と、−の電荷を持つ場合がある」ということを突き止めました。

 この実験により、雷雲の中は膨大な量の電荷がたまる「静電気」の帯電(物体が電気を帯びる現象)として認識されました。稲妻の発生について簡単に説明すると、例えば雷雲の中で−電荷の帯電の量が大きくなった場合、地面には+電荷が集まります。そして、雷雲の下部にたまった−電荷と地面に集まった+電荷の間に大きな電圧が発生し、互いに引き合うことにより、周囲の空気が電気の通りやすい状態に変わります。そして、空気が耐えられる電圧を超えた瞬間に、放電が起こり「ピカッ! ゴロゴロ」となるわけです。

 日本の電気の歴史では、平賀源内のエレキテル(摩擦起電器)が有名です。木箱に付いたハンドルを回すと箱の中にある布のようなものがガラスをこすります。このハンドルを回し続けることで、木箱から突き出ている2本の針金の間で火花がパチパチと散る代物で、オランダ製の装置を複製したものだったそうです。ちなみに、この仕組みは上昇・下降気流が激しい雷雲の中で氷粒が空気とこすれ、+または−に帯電する雷の発生メカニズムと似ています。平賀源内のエレキテルは残念ながら見せ物の域を脱することができず、日本における電磁気学の発展は明治時代までお預けとなりました。

 現代において、電気を溜める役割を担うのは「コンデンサ」と呼ばれる電子部品です。コンデンサは電源回路において重要な位置を占めており、現在では電気二重層コンデンサなどの大容量なものも開発されています。余談ですが、コンデンサに電荷を溜め過ぎると、コンデンサの中身で雷、すなわち電極間で放電が発生し、コンデンサを壊してしまうことがあります。

身近な電源「電池の話」

 静電気は連続したエネルギー源として扱いにくい代物でしたが、イタリアの物理学者ボルタは、化学反応を電荷の取り出しに利用する“電池”の概念を提唱しました(1800年)。希硫酸H2SO4の中に亜鉛Znと銅Cuの板を入れると、銅と亜鉛の間に電圧が生じ、また銅と亜鉛を針金でつなぐと電流が流れることが分かりました。

 硫酸の要素である水素イオン2Hを亜鉛Znが追い出し、硫酸亜鉛に変わる。つまりZnが溶けZnSO4に変化する化学変化を利用しています。亜鉛ZnはZn2+イオンとなって硫酸イオンSO42−と結合し、ZnSO4に変化します。このときZn原子から2個の電子2eが出てきて、先の水素イオン2Hとくっつき水素分子、つまり水素ガスH2となります。亜鉛の板と銅の板を針金でつなぐと、亜鉛の板から銅の板へと電子が流れ、到着した銅の板の近傍ではこの電子と+の水素イオンが結合し、銅電極から水素ガスが出てきます。なお、この亜鉛の板を「負電極」、銅の板を「正極」と呼んでいます。

 このボルタ電池は1.1Vの直流電圧を発生しますが、電流を流し続ける能力が小さく実用化はされませんでした。しかし、ボルタの功績は大きく、アルカリ乾電池のような使い切りの一次電池、リチウムイオン電池(注1)のような充電すれば繰り返し使える二次電池などに発展し、現在の乾電池を作るうえでの基本となりました。

注1:リチウムイオン電池は、電気自動車やハイブリッドカーなどで現在脚光を浴びています。また近年、光のエネルギーで直接電子の励起を行うPV(photovoltaic)、いわゆる太陽電池や、水素から電子をひっぱがして電流を作り出す燃料電池などが将来のエネルギー源の候補として脚光を浴びています。

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