現在、電気の供給源の主流として使用されているコンセント。
では、コンセントから取れる電気はどうやって作り出されているのでしょうか?
いまから100年ちょっと前、トーマス・エジソンとニコラ・テスラという2人の天才が競い合いをしました。ご存じ、「直流発電 vs. 交流発電」の論争です。ちなみに、電気が常に一方向に流れるのが直流で、電気の流れの向きが周期的に変化するのが交流です。
この戦いは「変圧器を使うと電圧を自由に変換できる」という特長により、交流発電、つまりテスラに軍配が上がります。交流は、長距離送電する場合に電圧を高く(電流を小さく)、つまり効率よく送電することが可能で、しかも電気の利用者は変圧器を用いることで、簡単に使用する機器にあった電圧に調整することができました。こうした経緯もあり、現在コンセントから取れる電気は交流となっています。
コンセントの片方の電極からもう一方の電極の電圧を調べてみると、+の極性と−の極性が繰り返し観測されます(電気の流れの向きが変わる)。ちなみに、日本ではこの+と−の繰り返し(電気の流れの向きの変化)が地域により1秒間に50回(50Hz)、60回(60Hz)と異なります(注2)。
注2:東日本が50Hz、西日本が60Hz。なぜ周波数が東西で違うのかというと、日本で交流が導入された際に、東西で違う国の発電機を購入してしまったためだそうです。ちなみに、昔の電気製品には、周波数の切り替えスイッチがあったようですが、現在ではパワーエレクトロニクスの発達により、周波数の違いは問題にならなくなりました。
交流の電気の発生の仕組みは以下のとおりです。
はじめに、エナメル線をぐるぐると巻いたコイルを作り、その両端にオシロスコープをつなぎます。そして、コイルの内側に強力な棒磁石を出し入れするとオシロスコープにゼロの線を中心に上下に、つまり+と−に振れる輝線の波形が表れます。磁石を動かさないとオシロスコープに表れる輝線はゼロの位置のままです。つまり、コイルから見た磁石の位置変化、言い換えると磁石から出ている磁束とコイルとが交わる量が変化する(注3)ときに電気が発生するのです。
注3:磁石から出ている磁束は一定ですが、磁石とコイルとの位置関係によりコイルと交わる磁束の量は変化します。磁石から遠いと磁束の量は小さくなり、磁石から近いと磁束の量は大きくなります。
この原理を応用したのが「交流発電機」で、磁束をよく通す材料でできたドラムの内側にコイルを装着し、磁石をドラムの内側で回転させることによりコイルに交流の電気を発生させることが可能になったわけです。現在では、磁石を回す動力には水力、火力、原子力などが利用されており、機械エネルギーを電気エネルギーに変換することを示しています。なお、交流発電は発電機が動いて(回転)いるときだけ発生するので電気を溜めておくことができません。これが電池と異なる点といえます。
以下に、発電所で作られた電気がコンセントに届くまでのルートを示します。
発電所(数万V)
↓
昇圧変圧器
↓
送電線(数十万V)
↓
変電所
↓
配電線(数千〜数万V)
↓
柱上変圧器
↓
コンセント(100V)
ちなみに、直流派のエジソンはというと、テスラとは逆に磁石を固定し、コイルを回転させました。電気の発生原理は同じですが、回転するコイルに発生した交流の電気の流れを一方向(=直流)に整える工夫を施しました。
以上、電気の発生について簡単に説明しました。最後に直流と交流の様子を図に示します(図1、図2)。
コンセントからの電気は交流で送られてくるわけですが、別に直流の電気が完全に敗北して、なくなってしまったわけではありません。実際、大半の電気製品や、LSIなどをはじめとする電子機器は直流で動作しますし、最近では「長距離送電は直流の方が効率がよい」「データセンターは直流給電がよい」などといわれるようになり、直流を見直す声も上がっています。
さて、ここで疑問がわいてきます。「コンセントからの電気は交流」「実際に使用する電子機器は直流」。はて、この交流と直流の違いをどうやって変換しているのでしょうか? その答えはACアダプターのようなコンセントからの交流の電気を直流の電気に変換する仕組みにあります。
次回は電気を加工するさまざまな方法を解説していきます。
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