LEDは近年省電力光源として脚光を浴びています。まだ普及はイマイチですが、近い将来、ルミネセンスとともに広く普及するものと思われます。LEDに流す電流を調節すると光量を変えることができます。ここで発光の仕組みからして、電流のON/OFFに対するレスポンスは超高速です。光信号のON/OFFに使われるくらいに高速です。
このことは照明用光源として、電球をトライアックによる商用周波数電源のON/OFF制御による場合のように無電圧期間の長い、荒っぽい電流調節ではチラツキが目立ってしまいます。では、LED照明にはどんな回路が使われているのでしょうか。電源としてダイオードブリッジだけではチラツキを防止するのはできませんので、ブリッジ出力の電圧の谷を少し埋める回路があれば何とかなります。図2aに回路を示します。
LEDの電流制御回路は、ダイオードブリッジ、電圧の谷埋め回路とコンバータ回路から構成されています。図2bに電圧の谷埋め回路の直流電圧波形を示します。
電解キャパシタCが2個直列に入っていますので、各キャパシタには交流入力電圧ピーク値の半分まで充電されます。キャパシタの放電は交流入力電圧の半分時点から始まります。キャパシタを3個使うと、ピーク電圧の3分の1にすることができます。
交流入力電流の波形は、電流の立ち上がり部でピークを持つような波形になっています。これは電圧の底の部分で、負荷のコンバータへ電力を供給するのは2個のキャパシタであり、この間に消費した電荷を補充するためです。この回路ではキャパシタから放電する区間が電気角約60度ですので、必要電力の3分の1を消費することになります。
このキャパシタの電力消費分を再チャージしますので、この電流はキャパシタインプット型に比べ、約3分の1となります。従って、電源へのストレスは大幅に改善されます。また、交流側へ流れる電流は図示のように電気角度でほぼ120度通流することになり、力率も良好なものとなります。
この回路に使われているコンバータは、いわゆる降圧コンバータで、Buck Converterといわれているものです。LEDの直列数が小さい(例えば直列数10で公称35Vくらい)場合によく使われます。FETがONのとき、リアクタLとLEDを通して電流が流れます。FETがOFFになると、Lに流れていた電流がLEDに流れ続けるようにもできます。使い勝手のよい回路といえます。
以上、充電回路やLEDドライブ回路の例で、電源高調波の抑制と小型低価格の両立が成立しそうな回路を説明しました。今回の説明は入力電流の説明に力点を置きました。電源を考えるうえで電源に流す電流は、常に意識しておくべき項目だからです。 ここでようやくフライバックやBuck Converterなどが出てきました。用途によりさまざまな回路が提案、実用化されています。高周波スイッチングはパワー回路の小型軽量化の基本技術ですので、次回はいよいよコンバータ部について基本的な事柄を解説することとします。
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