英語の説明文が長々と展開されるデータシートを前に思考が停止してしまった……。そんなときは、映画「燃えよドラゴン」のブルース・リーの教えを思い出してください。そう、「考えるな、感じるんだ!!」。英文を読解しなくても、データシートに記載されている図を見れば、その製品の機能を“感じ取る”ことができます。
英語で書かれた、データシートをはじめとするさまざまな技術資料とうまく付き合う方法をお伝えする本連載。1カ月のご無沙汰です。第1回目の前回は、「文字よりも数字を見よう」というコツを紹介しました。今回も、英語をうまく避けつつデータシートから必要な情報を読み取るコツをお教えします。
アルファベットびっしりのデータシートを前に思考が停止してしまった。そんなときは、映画「燃えよドラゴン」のブルース・リーの教えを思い出してください。そう、「考えるな、感じるんだ!!(Don’t think. Feel!!)」です。
その半導体チップがどのような機能を備えているのか? もちろんデータシートには詳しく書いてあります……英語の長い文章で。それにいきなり目を通すのは苦痛ですよね。そこで、まずは標準動作回路や応用回路の項目(英文データシートでは「Typical Operating Circuit」や「Application Circuits」などと表記)に記載されている図に注目して、そのチップの機能を“感じ取って”みましょう。
これらの図には、そのチップの標準的な使用方法が回路図として示されています。それを見れば、自分の用途にそのチップが合うかどうかを大まかに判断できるのです。
例として、電流検出アンプIC「MAX9928/29」(クリックでPDF形式の英文データシートが開きます)を見てみましょう。「Typical Operating Circuit」として示された図に注目です。一見して、このアンプICから2本の出力がマイコン(図中、μCと表記されているブロック)につながっているのが分かります。1本は、アンプICの「SIGN」端子からマイコンの「DIGITAL INPUT」へ。もう1本は、アンプICの「OUT」端子からマイコンの「ADC」に接続されていますね。
さっそく、このアンプICの機能を感じ取ってみましょう。…… SIGN端子は、何かしらのロジック信号を出力するようだ。単線だから、ロジックレベルの高/低の2値だけで伝達できる情報を送っているに違いない。だとすれば、それは検出した電流の大きさの情報などではないはずだ。電流値の情報は、2値だけでは送れない。ならばSIGN端子の信号は、もう一方の端子(OUT)の出力について、有効/無効か、あるいは正/負どちらの極性か、特定のしきい値を超えたかどうかなど、何らかの状態を通知するロジック信号ではないだろうか。
続いてOUT端子。この出力は、マイコンがA-D変換器(ADC)で受けているのだから、当然アナログ信号だろう。うん、これで検出した電流の大きさを出力するわけだ。
……こうしてアンプICの出力側の機能が分かりました。いや、「これ、感じてるじゃなくって、考えてるだろ」というツッコミは要りませんよ!
さて残りはアンプICの入力側です。SIGNとOUT以外の端子を見ると、「VCC」と「GND」、「RS+」、「RS−」の4つがあります。これらのうち、VCCとGNDは言うまでもなく電源と接地です。従って、最後に残ったRS+とRS−が検出対象とする電流を入力するための端子だということが理解できます。
どうでしょう? 英語の文章を読み込まなくても、このICの機能を大まかに把握できたと思います。
こうした回路図を見るときには、図中に記載されている仕様と回路定数にも注意してみてください。
理由はこうです。その半導体チップの機能が皆さんの要件を大まかに満たしていても、自分の設計仕様に合った回路を最終的に組み上げるには、英文データシートを“読む”必要があります。チップ周辺の受動部品の定数を設計仕様に応じて適切に選んだりするために、細かい説明に目を通さなければなりません。しかし、もしデータシートに載っている参照回路の例が自分の設計仕様に合致していれば、そのまま利用することもできるからです。
ちなみに、チップ自体のデータシートに加えて、半導体メーカーが別に用意している評価ボードのデータシートも同じように活用できます。一般に、評価ボードのデータシートには、ボードに実装されている回路全体について詳細な仕様と回路定数が記載されていますので、場合によってはそれを自分の設計に流用するのも良いでしょう。
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