日本人の技術者にとって、英語の壁は低くありません。こんなことないですか?海外の半導体メーカーの日本語Webサイトで見つけた技術資料。PDFを開くと、全部英語。そっとファイルを閉じる……。こうした英文資料とどう付き合うか。決して英語が得意ではない筆者が、日々の業務を通して編み出した方法をお伝えします。
皆さん、はじめまして。筆者は米国のアナログ半導体ベンダーの日本法人にFAE(Field Application Engineer)として勤務しています。米国本社で開発される新製品をお客様である機器メーカーに提案して設計をサポートしたり、自社製品を使った参照デザインを開発したり、お客様と本社の開発チームの間に入ってトラブルに対応したり……。そんな「外資系エンジニア」暮らしも、気づけば早十数年。さぞかし英語もできるだろう……と思われるかもしれませんが、さにあらず。どっこいそれでも生きている。
例えば、筆者の業務ではもちろんのこと、日本企業で機器設計に携わるエンジニアの皆さんでも避けて通れないのが、英語のデータシートでしょう。筆者は今でこそ対処法を編み出してなんとか乗り切れるようになったものの、以前はとても苦手でした。たった26個のアルファベッドを組み合わせてつづられた文章に、いったい何度惑わされたことか!
海外の半導体ベンダーの中には、データシートの和訳版を提供している企業が少なくありません。ただ、膨大な品種の全てが日本語化されているわけではありませんし、英語のオリジナル版が発行されてから和訳版が用意されるまでにある程度の時間差があるのも実情です。一方で海外メーカーの製品は、日本企業の製品に無い特長や機能を備えていることもあり、ユーザーとしては、「英文を読むのは嫌だけど、ちゃんと理解して採用を検討したい」というのが心情でしょう。
でも、われわれ日本人の多くのエンジニアにとって、言葉の壁は低くありません。こんなことはありませんか? 海外の半導体ベンダーのWebサイトにアクセスして、表示言語の選択肢をチェック。日本語がある、ラッキー。製品を特性パラメータで絞り込んで検索し、目を付けた製品の技術情報ページを開く。製品の概要がちゃんと日本語化されている。いいぞいいぞ。もっと詳しく調べようとデータシートをダウンロード。そのPDFファイルを開くと……全部英語。そっと閉じる。
あるいはこんなことも。それでも理解しようと読解に挑むも音を上げ、ならばとインターネット上で利用できる翻訳ツールにコピーした英文を放り込んでみる。そうしたら結果があまりにも直訳すぎて、何を言っているんだか逆にサッパリ分からず、とうとうあきらめた……。
筆者自身も、決して英語が得意なわけではありませんから、これは他人事ではありません。しかし今は、その英文データシートそのものが商売道具になってしまいました。もう逃げられないのです。
この連載ではそんな筆者が、日々の業務を通して編み出した、英語で書かれたデータシートをはじめとするさまざまな技術資料とうまく付き合う方法をお伝えしていきます。
もちろん、英語に習熟してスラスラ読解できればそれは素晴らしいことです。ですが、半導体製品を使いこなすことを「目的」とすれば、「英語」はあくまでも手段。もっと言えば、目的を達成できるなら、手段としての英語にこだわる必要はないのです。そう割り切れば、英語の技術資料との付き合いもグッと楽になりますよ! では、始めます。
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