次は、半導体チップの内部の動作を理解するステップに進みます。機能ブロック図(英文データシートでは「Functional Diagram」などと表記)に目を移してみてください。
再び、前出の電流検出アンプICを例にしましょう。ブロック図を見ると、このICがアンプ(図中のA)とコンパレータ(図中のC)を1個ずつ搭載しているのが分かります。これらを使って、(1)電流の大きさを検出してアナログ信号として出力する機能と、(2)その電流の流れる向きを検出してロジック信号で通知する機能の2つを実現しています。
先ほどの標準動作回路とこのブロック図を突き合わせれば、どの端子がどのような機能を果たすのかが必然的に見えてくるわけです。この例では、電流の極性通知用のコンパレータはSIGN端子に常時、ロジック信号を送っている。一方で電流検出用のアンプは、内蔵のスイッチ(図中のS1とS2)とカレントミラー回路(図中のQ1とQ2、CURRENT MIRROR)を介して、検出結果をアナログ信号でOUT端子に出力している。こんなふうに分かります。
もっとも、こうした図だけで全てを理解できるわけではありません。例えばこのブロック図にある2個のスイッチは、何かしらのタイミングで切り替え動作をしているはずです。しかし、この図にはタイミングチャートやそれに相当する説明の文章などは示されていません。どこかデータシートの別のところに記載されているのでしょう。
探してみると、このデータシートでは8ページ目にある「Detailed Description(詳細説明)」という項目の第2段落に、次の記述がありました。
Current flows through the sense resistor, generating a sense voltage VSENSE (Figure 1). The comparator senses the direction of the sense voltage and configures the amplifier for either positive or negative sense voltages by controlling the S1 and S2 switches.
翻訳すると、「コンパレータが、センス抵抗に電流が流れて生じるセンス電圧の向きを検出し、その結果によってS1とS2を制御する。それにより、正もしくは負のセンス電圧に対応したアンプとして回路が構成される」という説明です。このレベルまで詳細に把握するには、どうしても英文の読解を避けて通れなくなりますね。
いかがでしたか? “文章”ではなく“図”から、チップの機能を大まかに把握する。その流れをつかんでいただけたでしょうか。回例に挙げた電流検出アンプICは比較的単純な機能の製品ですが、この手法自体はもう少し複雑な機能の製品でも同じように適用できると思います。ぜひ日々の業務にご活用ください。
赤羽 一馬(あかばね かずま)
1995年に日系半導体メーカーに入社。5年間にわたって、アナログ技術のサポート/マーケティングに従事した。2000年に外資系アナログ半導体メーカーのマキシム・ジャパンに転職。現在は、フィールドアプリケーション担当の技術スタッフ部門でシニアメンバーを務めている。
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