磁界は体に良いのか悪いのか。これは場合によって異なる。変動する強い磁界には明らかな悪影響がある。では、弱い低周波磁界ならどうだろうか。今後は、電気自動車(EV)や太陽光発電システムのインバータなど弱い低周波磁界を帯びた製品が増えていく。ノイズ研究所など3社は、磁界を可視化するシステムを開発した。
電気自動車(EV)やプラグインハイブリッド車(PHEV)、充電スタンド、非接触給電、太陽光発電システム……。これらのキーワードに共通するのは何だろうか。
低周波磁界(交流磁界)だ。これらの機器はインバータを内蔵しており、100kHz以下の低周波磁界を放出している。低周波磁界は、強度(磁束密度)が小さければ*1)、健康にほとんど影響を与えないことが研究により分かっている。
人体に対する磁界の規制やガイドラインは、家電と鉄道に偏っており、電気自動車などそれ以外の機器では制定中である*2)。
*1) 都市の生活空間の磁束密度は、周波数が1Hz〜1kHzの範囲で1μTを超えることはないという。携帯電話機には周波数1GHz程度で、最大1μTの高周波磁界が認められる。なお、地磁気(直流磁界)の強さは緯度によって異なり、数十μT程度である。
*2) 国際非電離放射線防護委員会(ICNIRP)が「商用磁界下における人体暴露(ばくろ)のレベル値」を1998年(PDF)と2010年(PDF)に設定している。その後、欧州EMF勧告1999/519/ECと、EMF指令2004/40/ECやIEC 62233が続いた。IEC 62233では10Hz〜400kHzの磁界を対象としている。
しかし、規制やガイドラインが成立する前であっても、EVなどがどのような低周波磁界を放出しているのか、調べておかなければならない。
そのとき、どのように記録を残すのかが課題になる。「これまでも既存のガイドラインに即しているかどうか、判定はできていた。例えば、プリント基板の画像を定位置から撮影し、やはり定位置から測定した低周波磁界を実画像とオーバーレイ表示するシステムを既に運用している。だが、EVなどは複雑な形状であるため、この方法では測定・可視化できなかった」(ノイズ研究所 技術部で上席部長を務める石田武志氏)。
ノイズ研究所と日置電機、ローデ・シュワルツ・ジャパンの3社は、2012年7月、機器が放出する低周波磁界を測定し、その場で可視化する「空間磁界可視化システム」(EPS-02-EMF system)を共同で開発した(図1)。「低周波磁界の汎用可視化システムとしては世界初だと考えている」(ローデ・シュワルツ・ジャパン社長の笠井伸啓氏)。
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