私たちの身の回りにある、あらゆる装置に搭載されている「MCU」について、その概念をあらためて解説します。
MCUはMicro Controller Unitの略で、マイクロプロセッサをベースとした制御装置を意味します。しかし、一般的にMCUというと、制御装置の中に組み込まれるマイクロプロセッサベースの制御ICそのものを指します。
MCUが組み込まれた制御装置は、ECU(Electronic Control Unit)と呼ばれたり、単にControl Unitと呼ばれたりします。自動車でECUというとEngine Control Unitを指しますが、中にはMCUが搭載されています。ここの説明では、MCUはマイクロプロセッサベースの制御ICとして扱います。
MCUはマイクロプロセッサベースのコントローラICで、マイクロプロセッサを搭載し、制御に必要なI/Oとプログラムやデータを格納するメモリが1つのICに搭載されているのが普通です。MCUの中には制御装置として必要な回路がすべて搭載されていますから、ワンチップで1つのシステムとして機能します。
こういったICのことをSoC(System-on-Chip)と呼びます。従って、MCUはSoCの一種になります。一般的には、マイクロプロセッサベースの制御用SoCで、ASSPとして作られているものをMCUと呼んでいます。
MCUは制御に使われるという説明をしましたが、ここでいう制御は必ずしもメカニカルな装置ばかりではありません。MCUの用途は機械的な制御にとどまらず、あらゆる機器に及んでいます。
実のところ、私たちの日常の生活はMCUに囲まれているといっても過言ではありません。朝起きてから寝るまで(寝ている間も)、自分の身の回りにある多くの装置の中で、MCUが動作しています。
例えば、オーディオ機器や家電製品、個人の情報機器、ICカードや社会インフラ装置など、インテリジェントな動作をする装置にはかなりのMCUが搭載されて活躍しています。
私たちの生活がより豊かになり、産業にはより高度の生産性が求められるにつれ、民生機器や産業機器にかかわらず、機器に高度なインテリジェンスを持たせる必要性が増えています。MCUを搭載することで機器にインテリジェンスを持たせられるので、MCUの出荷量は毎年増え続けていて、市場規模は広がっています。
MCUは搭載されているプロセッサに応じて、4ビットMCU、8ビットMCU、16ビットMCU、32ビットMCUといった分類があります。初期のMCUはさほど複雑ではない制御が多かったため、使われるプロセッサも4ビットや8ビットが大半でした。しかし、最近では通信やマルチメディア処理までもMCUで処理することが求められるようになって、32ビットMCUの需要の増加が顕著です。一方で、8/16ビットMCUも利用分野を広げる形で市場規模が広がり続けています。
近年MCUの需要が伸びている代表例として、自動車があります。最近の新車に乗ってみると、さまざまな機能が自動化されているのに驚かされます。シート位置の制御、窓の開閉、スライドドアの開閉、インパネ制御、エンジンやミッション、ABSなどにもMCUが使われていて、1台の車には50個以上のMCUが搭載されているといわれています。
自動車に限らず、今後は多くの装置がネットとつながりインテリジェントな動作を求められるのは間違いなく、MCUの使用量は今後も伸び続けていくと思われます。
MCUはSoCですから、ワンチップのICの中にシステムとして動作に必要なコンポーネントが搭載されています。まずマイクロプロセッサベースのシステムですから、プロセッサは必須であり、加えてプロセッサの動作に必要なメモリ、さらに制御装置を駆動するI/O回路が搭載されています。
MCUはASSPが多いため、ある程度搭載される機器での使われ方を想定して回路構成が設計されます。例えば、車載用、モーターコントロール用、センサー制御用などの応用例を想定し、それに必要なI/O回路を搭載しています。しかし、応用例は膨大にあるため、どうしても最小公倍数的なI/O回路を搭載し、しかもいくつかのバリエーションを用意しています。
I/Oの違いでバリエーションがあり、搭載しているメモリのサイズでもバリエーションができ、さらに実装形態や速度グレードなどでもバリエーションができます。そのため、MCUの製品ラインアップは非常に品種が多いのが特徴です。
MCUを使うユーザーとしてはできるだけ外付け部品を減らしたいので、必要なメモリやI/O回路がすべて搭載されているMCUを選択したいと考えます。従って、バリエーションが豊富で選択肢が多いのは喜ばしいのですが、それでもワンチップでは必要な機能がカバーできない場合も生じます。
その場合、別のチップを外付けで搭載するか、ASICベースでMCUをカスタムで設計してもらうことも可能ですが、開発費(NRE)の負担が生じます。
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