これまで、湿度管理が不十分でリレーの内部に水分が残った状態でリフローすると、フラックスがリレーの内部へ入り込み、リレー接点の接触不良が引き起こす現象を紹介した。しかし、それでは説明がつかない不可解なフラックス侵入によるリレーの不具合も発生した。今回は、リレーにフラックスが侵入してしまう“隠れた要因”を探りながら、リレー実装の注意点をまとめる。
SMTリレーにフラックスが侵入して、リレーが動作不良になる現象やプロセスを2013年4月掲載の記事で報告した。SMTリレーの実装不良の主な要因はリレー保管時の不十分な湿度管理にあった。
リレーの内部に水分が残った状態でリフローすると、最大250℃というリフロー温度で水分が気化しリレー内部の圧力が高くなって、リレーのシール部に隙間を作って空気が漏れる。その隙間からフラックスが入りはじめ、リフローの次の洗浄工程で洗浄液がフラックスを溶かし、洗浄液とともにフラックスがリレーの内部へ入り込み、広がってリレー接点の接触不良が発生した。
しかし、リレーの不具合でいくつかの不可解な問題も発生した。それはリレーのコイルが断線する重不良や、製造後の基板検査でリレー接点の接触不良があり、リレーを開封しても原因物資がリレー内部に見つからないなどの問題である。これらの不良は、保管時の湿度管理不足以外の、隠れた不具合要因があるようだ。今回は2013年4月および5月掲載記事の続きとして、隠れた不具合要因を深く追求したので報告する。
リレーのコイルが断線した不良は短期間で発生するのではなく、基板出荷後の3カ月から半年後に不良が発生していた。これはリレーを実装し、洗浄した時に大量のフラックスと洗浄液がリレーの内部へ侵入ったことに起因している。リレー内部に入った洗浄液は徐々に揮発するが、フラックスはリレー内部に残留する。そして、フラックスがリレーのコイル表面の保護膜(エナメル)を溶かし、コイルの細い導線が腐食してコイルを断線させる。
リレーのコイル断線が起こるには、大量のフラックスや洗浄液がリレー内部へ入ったとしか考えられない。大量の洗浄液が入るにはリレーのシール部に大きな隙間が空いたか、複数の隙間が空き、そこから大量の洗浄液がリレーの中に入ったことが想定される。また、基板の製造後に接触不良が見つかり開封しても原因物資が見つからなかった原因は、微量の洗浄液がリレーの内部へ入り、接点部に付着して検査不良になったと考えられ、リレーを取り外す時の熱やメーカーで解析するまでの時間経過で洗浄液が揮発したと推定される。いずれの不良もリレーのシール部にリフロー後に隙間が生じ、洗浄液が入ったことが原因と考えられる。
真意を確かめようと、不良が発生したリレーのメーカーに対し、封止構造や封止材料の情報の開示を依頼したが、機密情報とのことで回答は得られなかった。それならばと、「リフロー時の高温でシール材が軟化するかどうか」を確認したら、以下のような予想外の回答があった。
当社のSMTタイプのリレーの封止には、熱硬化型エポキシ樹脂を使用しています。熱硬化型のため、一度硬化した封止剤(エポキシ樹脂)は加熱により軟化することはございません。(軟化温度は存在しない)封止剤の種類にもよりますが、当社が使用している封止剤は温度を上げていきますと300℃近辺で固体からガス化が始まります。
さらに回答には、300℃以上の温度を上げると昇華して重量が減少するという根拠が示されたグラフが添付されていた。つまり高温でリフローしても250℃程度では、シール材は軟化せず、シール部の劣化はないということになる。これが本当ならば理想的なシールである。
だが、現実に発生している不良を見る限り、シール部が劣化しないというのは、どうも信じがたい。
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