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SPICEの過渡解析(その2):インダクタンス素子の場合SPICEの仕組みとその活用設計(5)(2/4 ページ)

» 2013年09月04日 10時30分 公開

過渡現象解析事例

 実際の解析事例として図2(a)のLR回路を取り上げ、時刻0において電源V1が接続された時の各部の電圧、電流の変化の様子を求めます。

  • 条件1:初期条件としてインダクタL1の電流は0Aとします
  • 条件2:解析の時間ステップは0.1秒間隔で1秒間の解析を行います

図2 図2 LR回路(クリックで拡大)

 等価回路は図2(b)に示すようになります。

  • V1とR1(1Ω)⇒I1とG10
  • L1(1H)⇒ReqとE
  • 時間刻み⇒0.1秒

 これらを上記の定式化のルールに従って回路要素行列[G]を組み立てると各要素の定数は次のようになります。

式(5)

 従って、回路要素行列[G]は、本来の節点番号0,1からなる2行2列を拡張した式(6a)の3行3列の行列になります。

式(6a)

 ここで、具体値を代入すると式(6b)のように値を決めることができます(式(6b)内の丸数字は定式化の手順番号です)。

式(6b)

 ここから0行と0列に関する要素を抜くと、解くべき回路要素行列[G]は、

式(6c)

となります。

 そして、電流ベクトル[I]は、

式(7)

となります。

 初期値としてIL0=0を与えると、E=−Req×IL0=0ですので、電流ベクトルの具体値は

式(7b)

となります。つまり、この行列を解けば式(8)のように各値を得ることができます。

式(8)

 この値は、初回刻み時間Δtが経過したときの各節点値です(この例では0.1秒後)。このようにして新しい節点1の電圧v1、インダクタ電流iL1が求まりましたので、式(5)のインダクタ等価電圧E(=−Req×ILn)を更新して電流ベクトル[I]を組み直し、上記と同様に解けば計算を進めることができます。

 この繰り返しの結果を図3に示すとともに、参考として代数学的な真値も併記します。1次近似でかつ、粗い刻み時間ですので真値とは差を生じていますが、現象そのものは再現できています

図3 図3 LR回路応答波形(クリックで拡大)

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