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ワイヤレス給電の最新事情Qi、PMA、A4WP(2/4 ページ)

» 2013年12月02日 08時00分 公開
[Jack Deans,Integrated Device Technology(IDT)]

急速に発展するワイヤレス給電市場

 電力やデータを有線接続によって伝送するという形態は、日常生活やビジネスの多くの場面で、われわれに避けることのできない不便さをもたらしています。データについては、現在では無線で伝送する手法が当たり前のものとなっています。しかし、電力の無線伝送については、まだデータの無線伝送の普及水準には達していません。かさばる電源アダプターや電源ケーブルを持ち歩き、誰でも使用できる公共のコンセントを探す煩わしさに、外を出歩く人々は常に悩まされています。

 ワイヤレス給電のエコシステムが広範囲にわたって構築された場合、その恩恵を最も多く享受できるのは携帯電話機です。その理由はいくつかあります。現在の携帯電話機は、高輝度で大きなディスプレイ、高性能なマルチコア・プロセッサ、一連の無線機能、リアルタイムなデータ取得を必要とするアプリケーション、新たな生体認証アプリケーションなどを備えるため、場合によっては1日に何度も充電しなければならない状態になっています。軽量で薄型の携帯型機器が求められていることも、充電が頻繁に必要になる状況に拍車をかけています。残念ながら、リチウムイオン電池のエネルギー密度は、こうした要求に見合うペースでは増加していません。主要な携帯機器メーカーのほとんどは、消費者の要求に対応してQiに準拠した製品を既に提供しています。また、携帯電話事業者も、携帯型機器の充電に関する課題を解決することで、無線データ通信の利用を促進したいと考えています。そのため、ワイヤレス給電のエコシステムの構築を推進しています。

 給電面に機器を配置するだけで、いつでもどこでもワイヤレスでの充電が行えるようにするには、トランスミッタ・パッドをどこでも利用できる状態にする必要があります。現在、QiやPMAに準拠したトランスミッタ・パッドとしては、家庭やオフィスでの使用に向けてさまざまなフォーム・ファクタのものが提供されています。

【図1】ワイヤレス充電により、携帯電話機などの機器は格段に便利に使えるようになる。機器に固有の充電器やケーブルを複数持ち歩く負担が軽減される

 トヨタ自動車やChrysler(クライスラー)などの新型車の一部は、Qiに準拠するトランスミッタを備えています。今後、他のメーカーや車種もこの動きに追随する予定です。また、自動車のアフター・サービス市場向けの製品も既に数多く提供されています。PMAについても企業からの支持が急速に拡大しています。

 ワイヤレス給電の普及を推進する企業の多くは、ワイヤレス給電のエコシステムとスマートネットワークをレストランや小売店舗、ホテルなどに導入することが、顧客の呼び込みと新たな収益源につながると考えています。例えばStarbucks(スターバックス)は、2012年に米国マサチューセッツ州ボストンで、「Never Powerless」というプログラムを開始しました。同社はこれを新たに米国カリフォルニア州のシリコン・バレー地区にも導入し、米国だけで100万カ所を超える充電スポットを提供するという中期計画を打ち出しています。

 複数のワイヤレス給電規格に準拠するよう設計された携帯型機器は、規格の確立とトランスミッタ・ステーションのエコシステムからの恩恵を最も多く享受することになります。大きな成長を見せるこのアナログ/デジタル技術は、半導体メーカーやセットメーカーによって市場に導入されました。ワイヤレス給電に対する需要が高まっていることは、IMS Researchの最近のリポートからも明らかです。そのリポートによれば、ワイヤレス給電製品の出荷数は今後数年間で高い成長を示し、2016年には3億台を超え、2018年には10億台に達すると予想されています。この市場が2011年まではほとんど存在していなかったことを考えると、驚異的な成長率であると言えます1)

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