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» 2013年12月02日 08時00分 公開

ワイヤレス給電の最新事情Qi、PMA、A4WP(3/4 ページ)

[Jack Deans,Integrated Device Technology(IDT)]

電磁誘導(MI)方式と磁気共鳴(MR)方式

 最初に市場に登場し、ワイヤレス給電の黎明期に主流になったのは、MI方式(QiとPMA)でした。しかし、実際にはMR方式(A4WP)も、いくつかの課題はあるもののMI方式に勝るいくつかの利点を備える優れた技術です。

 Qiは110kHz〜205kHzの共振周波数を使用します。それに対し、A4WPでは6.78MHzのより高い共振周波数を固定で使用します。このことから、A4WPでは、インダクタンスに関するファラデーの法則に基づき、より小さい結合係数で(これにより、位置についての柔軟性が得られる)、より効率的な電力伝送を行うことが可能です。また、周波数が高く、コイルの電圧も高いことから、受信コイルをより小さく細くすることもできます。そのため、携帯型機器への機械的な実装がより容易になります。周波数が高いことによるもう1つのメリットは、表面の渦電流が少ないため、トランスミッタ・パッドの近くに存在する金属への蓄熱量が少なくなることです。これは、充電の対象となる機器内の金属物質(電池など)に対する蓄熱量も少ないということを意味します。

 A4WPでは、双方向のBluetooth Low Energy(BLE)による帯域外信号で通信を行い、充電の対象となる機器に供給する電力量を調整します。一方、QiとPMAでは、単方向の帯域内通信によって変調をかけ、トランスミッタに電力調整の情報を返します。Qiの手法はシンプルで安価に実現できますが、1つのレシーバにしか対応できず、通信速度が低く、システムが生成するEMI(電磁波干渉)の影響を受けやすいという欠点を持ちます。

 MR方式が抱えていた実装上のいくつかの課題は克服されました。現在では、搭載製品の量産に向けて、さらに最適化された実装手法が考案されています。MR方式のレシーバには、共振周波数で動作するQ値の高いLCタンク回路が使用されます。ここでの課題は、温度や電圧が変化しても、タンク回路の共振周波数を固定の値に維持し続けることです。この周波数が変動すると、効率が低下してしまうからです。MI方式の規格では、常に共振周波数よりも高い周波数で回路が動作するので、Q値の高い回路や高精度な受動部品は必要なく、実装はより容易です。

 一方のMR方式では、Q値の高い回路を構成するために必要な許容誤差の小さい部品のコストは、コイルが安価であることによって相殺されます。シールドされていないMR方式の受信コイルとしては、MI方式のコイルよりも小さく、ワイヤがより細いものを使用できます。そのため、必須の部品であるこのコイルのコストは抑えられるはずです。

 ワイヤレス給電システムから生じる電磁放射は、消費者にとっては懸念される要素ですが、本稿では簡単に触れるにとどめます。MI方式は、物理的な意味での結合が密な方式です。MI方式では、送信コイルと受信コイルが正対するように配置することで電力伝送を行います。この場合、コイルの上下にフェライト・シールドを直接配置することができます(図2)。

【図2】フェライト・シールドを使用することで、磁界をほぼ封じ込めることができる

 このフェライト・シールドにより2つの効果が得られます。まず、磁束線をコイルの近くに維持し、その循環的な流れをよくすることで結合が強化されます。もう1つの効果は、シールドによってシステムから放射される電磁波が低減されることです。一方、MR方式の結合は疎で、トランスミッタとレシーバを数十cm離して配置することができます(図3)。ただし、このような使い方になることから、フェライト・シールドを使用しても、MI方式の場合のような効果を得ることはできません。民生機器市場でワイヤレス給電を普及させるには、1つの技術的な課題として、放射を安全なレベルに確実に抑えることが求められます。

【図3】MR方式のワイヤレス給電の結合は疎なので、空間自由度が高い

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