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ATX電源の修理 〜1台目〜Wired, Weird(1/3 ページ)

今回から2回に渡って、PCなどに利用されるATX電源の修理で垣間見た“悪い設計”を実際の修理手順を追いながら、紹介する。今回は、実装設計上の不具合を製造面でカバーしたものの、結局は動かなくなってしまったATX電源を修理する。

» 2013年12月16日 10時00分 公開
[山平豊内外テック]

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 部品の修理業務を始めて、そろそろ1年半が経過した。この1年半で多くの部品の修理を手掛けることができた。修理品にもいろいろあった。不良箇所が明確で簡単に修理できたものや、半月ほど時間をかけてじっくり調査し何とか修理できたもの。全く手に負えなかったものも多数あった。

 部品の修理を行うには、事前にその部品の仕様や回路と構造を理解した上で行わないと、かえって修理部品を壊してしまうことがある。このため、修理前に可能な限り部品の情報(マニュアル、回路図など)と依頼先の不具合情報を収集し部品への理解度を高める準備作業が重要だ。

修理品にみる“設計・製造のワナ”

 修理の仕事の面白みは、何と言っても故障箇所を特定し部品を交換して正常動作した時の満足感にある。だが、それ以上に「なぜその部品が壊れるのか故障の原因を特定すること」に面白みを感じる時も多々ある。そんな故障原因を探す中では、「これは!」と思うような良い設計や、見落としやすい設計ミス、危ない設計、製造ミスなどをいろいろ垣間見る。これから数回にわたり、読者の皆さんの反面教師となるように、陥りやすそうな悪い設計を垣間見た例を少しずつ紹介していきたい。

動かない2台のATX電源

 まずは、読者にもなじみが深いPC用の電源のATX電源の修理の例を説明しよう。

 図1にATX電源の外観写真を示す。

【図1】修理するATX電源

 図1はAC電圧の100Vと200Vをマニュアルで切り替えできるATX電源の写真だ。入力と出力のコンセントの間に赤色の電圧切り替えスイッチがある。右側の配線はDCとACの出力の配線で、配線の色で電圧が識別されていた。「GND:黒」「3.3V:橙」「5V:赤」「12V:黄」「-5V:白」「-12V:青」の色分けだ。

 今回は2台の電源の修理依頼があった。いずれも電圧自動切り替え仕様のATX電源でAC115VとAC230Vが接続可能だった。自動切り替え基板は図1の切り替えスイッチの位置に実装されていた。1台目の電源基板の外観上は問題なかったが、AC100Vを入れてもファンが回転せず、2次側にもDC電源出力が全く出なかった。2台目の電源は一次電源側のヒューズが切れ、基板上の大きな茶色のプラスティックフィルムコンデンサが跡形もなく焼損していた。2つの電源はいずれも台湾製で、台湾の著名な部品メーカーの名前が書いてあった。

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